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第5話 南西辺境領に近いイスパーシャ王国

 まあある程度金も貯まっていたし、情報にしても帝国にとっては別に何処にばれても構わないものだったし。

 俺が帝国から指名手配される様になったスパイ容疑は、あれですね。

 南西辺境領に近いイスパーシャ王国に所属して情報員として活動していた時です。

 あの国はすぐそこに辺境領という帝国のお目付役の様なところがあるにも関わらず、どうも土地柄か、南の大陸と交渉して密輸だの何だのする様なことが多かったんですよね。

 その頃俺は、渡り歩くうちに様々な将棋の腕も上げてました。

 六角盤八角盤十二角盤とまできた時、とうとう円盤の存在を知りましたね。

 この発祥地がイスパーシャ王国だったんですよ。

 それで入り込んでいるうちに、俺のこことを他の属国で働いている時に見たことがある、という奴が王宮と近しかったらしく。

 円盤将棋はもともとは南の大陸の別の遊戯盤と、どんどん角数が減って行く帝国の将棋とが合体した様なものでした。

 そもそも何故どんどん角数が増えて行くのか、ということですが。

 基本の一対一の場合、八路盤や九路盤を極めて行く、ということもできる訳です。

 その場合、戦術を極めに極めるという遊戯ですよね。

 ただ現実にそういう状況は起こりえません。

 例えばこの帝国にしても、23の自治領と属国から構成されている訳です。

 対外戦争が無いならば、次に警戒すべきは内戦でしょう。

 角が多いというのは、常に大量の敵が参加する乱戦を意味しています。

 チェリ王国などでは八角盤しか普段やっていない様でした。

 他の盤での遊戯は広まることが無い様です。

 つまり、あの国は自国と対一つの国とてどう戦うか、というのが基本的な頭なのだと思われます。

 と言うか、防衛戦ですね。

 海を背後に持ちますが、国境線は南東辺境領が守ってくれている。

 こういう国はひたすら自国を守る「だけ」に徹します。

 実際明らかに武より文に偏った国家です。

 そういう国ではあくまで一対一の遊戯盤が好かれるのでしょう。

 しかしあの大陸ではそうではない様です。

 これはイスパーシャに所属した時、向こうに潜入して判ったことなのですが。

 向こうは国家という概念が本当に少ない。

 と言うか、無いですね。

 あと、回った時に思ったのは、「かつて繁栄していた大帝国が天によって滅ぼされた後のものを利用して生きている、自然によって切り離された豪族が点在している場所」でした。

 砂漠が本当に多いのですが、その下にがっちりとした石造りの道があり、交通はそれを利用している面が多かったです。

 俺が回れたのは、大陸の北半分ですが、感覚は案外俺の故郷に近く、自然によって生かされている感が強かったです。

 定住できるのははオアシスがある部分だけ。

 いくら道は舗装されていると言っても、砂嵐、竜巻、蝗害等でそれぞれの豪族は戦乱を起こすことすらできないという模様でした。

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