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第4話 国境近くの街

 当時俺はもう結構筋肉も上背もついて、少年から青年にさしかかっていたんですが、上陸してみて、決定的な違いにまず気付かされましたね。

 肌の色ですよ!

 黒髪黒目だけでは越えられない壁が、そこにはありましたね。

 まあそれでも俺くらいの奴は居ない訳でもなかったんでしょう。

 そのことも踏まえて、片言交じりで国境向こうの街を探索したものです。

 俺から見た当時の群島国家の国境近くの街というものは、実にお気楽でしたね。

 食物は豊富、気温は常に暖かいから暑い、虫が多く! 

 黒髪黒目の男女がいつも大声でわめきあってるって印象でしたよ。

 薄着で、暑すぎたら昼寝して。

 ただ、それでも船の操作とかはやはり凄いんですよ。

 あとは兵器。

 基本的に船を使う連中で、時には漁業にも応用するくらいです。

 それだけでも情報としては、ある程度役に立った様です。

 何より飛び道具の使い方が自分達とはまるで違う、自分達は戦法の一部分にしかしていないが、それを漁業に普通にぽん、と使えるということ自体に、火薬の生産と使用が当たり前になっているということだ、と。

 自分が報告したことが、上司にはそう分析されるんだ、ということに、俺は感嘆しましたね。

 そこから情報の面白さというものを知った気がします。

 何ってことのない人々の暮らしを見てくる中でも、敵と見なした向こう側の戦略戦術を予想することができる、というのは。

 まあそれから何度か行くうちに、片言の言葉も片言なりに話せる様になったら、それはそれで向こうの連中の暮らしぶりとかも気付く様になって。

 あとは考え方ですね。

 そういうものもできるだけ長く滞在して記憶して、それを上司に告げるということが何度かありました。


 俺がそこを去ったのは、その三度のにらみ合い時期が終わった辺りです。

 周囲が


「いい加減足を洗って堅気になれ」

「嫁さんを探して所帯を持て」

「いつまでも傭兵稼業はやっていられないぞ」


 と言い出した頃でしょうか。

 いや、本当にいいところでしたよ。

 何でしょう。

 後で行った南西辺境もそうでが、人々の吹きだまりというか。

 まあ男ばかりというところは変わらないんですがね。

 それでその良い人達が俺にもそろそろ、と色々すすめてくるので――

 河岸を変えることにしました。

 やっぱり最初に女に子種を搾り取られた、というのは相当厳しい印象でしてね。

 本当に、女にそういう意味で触れられるとその時のことが思い出されて吐き気がするというか。

 帝国には硬派という言葉や文化もあったのがありがたかったですね。

 そう言ってしまうと案外皆そうかそうかということにしてくれました。

 だけど


「いい子がいるんだ紹介してやるぞ」


と上司に勧められた時、ああもう駄目だ、と思いまして、別の場所に移ることにしました。

 本当にここは自分にとっての学校でしたよ。

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