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第3話 情報員としての最初の仕事

 まあよくあることですよ。

 辺境領は元々女を買う文化が少ないですから。

 陛下の直属だけあって、自由に見えて結構厳しい側面もあった訳ですよ。

 あとはそうですね、そこにやってきた男達を根付かせようっていうこともあったんじゃないですか?

 強い兵士は留めておいた方が有利ですし。

 でもそういうのがどうしても、というのはやっぱり何処にも居まして。

 自分は別に嫌いではない先輩達の相手はよくしたもんですよ。

 今となってはおっさんですからね、想像しがたいでしょうが、まだ当時はガリガリのガキでしたから。

 それはそれでびっくりしましたがね、でも故郷の女達より優しかったですよ。

 だからまあ、後になって女もいいもんだ、と思った時には、その頃の先輩達のことを思い出すこともあるんですね。

 そう、将棋もこの時代にはじめて覚えましたね。

 ただの遊びであると同時に、戦略戦術を覚えるためのものでしたから、まあ色んな盤がそこにはありました。

 先輩達は俺が何にも知らない、っていうのが面白かった様で、まあこれも、基本の八路盤から教えてくれましたよ。

 そこから九路盤、十二路盤、六角盤、八角盤、五芒星盤とか色々。

 円盤はまだこの時点では知りませんでしたね。

 特に、自分を可愛がってくれた先輩は基本の八路盤を徹底的に仕込んでくれましたね。

 まずはこれで俺以外に勝てる様になれ、と言ってきましたよ。

 凄い無茶ぶりです。

 でも俺は当時はまだ純粋な少年でしたから、まあがんばってしまうんですよ。

 それで本当に勝ってきた時にはまあ可愛い奴可愛い奴と揺さぶられたもんですよ。


 で。

 学んだり遊んだりだけではさすがに兵士としての働きじゃあありませんね。

 実際に兵士としての仕事もしました。

 あの時代でしたら、そう、群島国家とは三回くらい緊張したにらみ合いをしたことがありますね。

 その際に俺は最初に斥候の訓練を受けたんですわ。

 泳ぎも無論ここで覚えました。

 まあ、先輩達の様に長く長くは続きませんがね、それでもある程度の距離泳げる様になりました。

 でまあ、何で俺が斥候になったかというと、この外見ですよ。

 黒髪黒目。

 案外これが帝国全土では少なくて、群島国家では多いんですよ。

 それで俺は言葉が話せない設定で、ともかく向こうの状況を見て記述、できれば記憶してくる様に訓練されました。

 これが俺の情報員としての最初の仕事ですね。

 それで俺は、まるで文化の違う群島国家に足を踏み入れたんですよ。

 いや参りました。

 何と言っても、幾ら海を挟んで近い場所にあるとは言え、気温も湿度もまるで違う。

 特に俺なんかは、生まれが乾燥してましたからね。

 しかも砂漠やら高い山やらで、どちらかというと寒い時期の方が多い。

 それに対して、群島国家っていうのは、年柄年中暑いんですよ。

 いやもうそれだけで俺は死にそうでしたよ。

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