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第2話 南の辺境領から群島国家へ

 一番簡単に入り込めたのは、やっぱり南の辺境領ですね。

 南東でも南西でも同じです。

 南の大陸や、群島国家に対する防衛線には、幾らでも兵士は必要。

 こういう雑多な食う寝るところに住むところが必要な兵士として採用されるのに必要なのは、実のところ力量でも向こうの大陸だのへの知識じゃあ無いんですね。

 逆でしたわ。

 向こうに大陸なんかあるのか、群島国家なんかあるのか、というくらいの馬鹿さと、武器の使い方は知らないけど身体は動かせる、という奴ですね。

 というのも。

 そもそも自分もそうですが、大概の部族領に生まれたもんなんていうのは、自分が帝国の民ってこと自体も知らないんですよ。

 意識もできていない。

 それところか、天と地がある程度しか実は判っていなない。

 でも、目の前にやって来る獣に対しては、素早く反応して狩ることができる。

 そういうのが、使いよいんですよ。

 自分はまず南東辺境領に行きました。

 とりあえず人が居る場所で、何処でそんな職場があるかと聞いたら、南東辺境領では常に傭兵を募集しているって聞きましたからね。

 実際行ってみて、すぐに雇われましたよ。

 まあ判るんでしょうねえ。

 何せ俺は当時水浴びしかしたことが無かった類いでしたし。

 ああつまり、そういう顔や皮膚になっていた、ということですよ。

 そういう若いのは、育ちがまたそういう場所の部族の出だというのが判るんですわ。

 いやもう、まずぬるい温度の湯涌に叩き込まれて皮膚の上の積もり積もった垢をふにゃふにゃになるまでふやかされて、それからごしごし先輩兵士に洗われるんですわ。

 一緒に住むのにあんまりにも臭いから、と!

 いやあ、当時の俺には拷問でしたが、後になってみれば、凄く親切なところでしたなあ。

 あとは寝床。

 そして飯です。

 俺は当時ガリガリなくせにやたら動けたし、歳も部族の数えだったんで、皆もっと育つことができるから食え、ともう椀や皿に盛る盛る。

 故郷じゃ男はそんなに食わせてもらいませんでしたからねえ。

 本気であそこは自分の、まあ学校の様な場所でしたよ。

 そう、実際学校という部分もありましたね。

 何せ様々なところから来た連中のたまり場でしたから。

 体術剣術棒術、それに銃の基本的な使い方もそこで覚えました。

 あとは、何と言ってもこの世界の地理と歴史。

 帝国が帝国であることを、ここで知りましたよ。

 いやまじでびっくりしましたね。

 天と地しか知らなかった奴からしたら、世界は球体で出来ていて、今居る場所の海の向こうに群島国家があって、向こうは海で防衛ラインを張っているし、こちらもそれといつもバランスをとって何も起こらない様にしている、なんて。

 まあ頭の中が揺さぶられましたね。

 あとはまあ、文字やら遊び事、それに女に辟易していた自分は結構先輩達に可愛がられもしましたね。

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