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第59話 信仰

【8月1日 教え:塚原 祐介】


「繋命会の教えについて。現世の生命、もしくはその『カケラ』を死者に捧げて祈りを捧げる。捧げられた『生命力』は、死者の魂を媒介に神によって現世の信者とその周囲へ『御利益』として還元される。もっと砕けた言い方をすれば、生き物かその一部を生贄として捧げれば、自分とその周りに幸福が訪れる……って感じかな」

 優姫が淡々と『繋命会』の思想を語る。

 生贄、死者、魂、神、御利益。

 現世で、そんな馬鹿げた話を信じられるか。

 まるで映画かドラマの設定のような話に、俺は理解が追いついていなかった。

「……馬鹿げてる、そんな事」

「冷静に考えれば有り得ないよね、要はオカルトだよ。けどね……壊れた人間はそれにすら縋り、救いを求める。あんちゃんがそうだったように」

 優姫は全てを知っているかの様に、俺を嘲笑う。

 狂っている。こんな下らないオカルト話を信じて、杏奈はあんな真似をしたのか?

 西崎の右足の親指を切り落とし、峰岸の唇を切り裂き……それを生贄として『供物』にした?

 杏奈自身と、そして……俺に対する『御利益』の為に。

 悪い冗談にしか聞こえない。

 仮に、本当に優姫の話が全て真実だというのなら……

「狂ってる、お前ら……」

「だろうね! だって、その狂った宗教を作ったのは……他でもない、狂ったボクなんだもん」

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