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第39話 覚悟

 病院に戻ると、案の定大人達に物凄く叱られた。

 勝手に外に出たのだから、仕方ない。

 けれど、あの日に外へ出て良かったと思う。あの日、芹那に出会わなければボクは哀れで不幸な弱者ままだった。


「優姫!」

「もう、もう少し静かに入って来られないの? 兄さん」

 病室へ兄さんが慌ただしく飛び込んでくる。

 相変わらず、兄さんは落ち着きが無い。

「お前……だって、病院を抜け出したって!」

「まぁね、散歩がしたくなってさ。心配させてごめん。けど、そのお陰でもの凄く元気になった!」

 あの日以降、ボクは生気を取り戻した。

 何故なら、覚悟を決めたから。何があっても、絶対に幸せになるという覚悟だ。

 もう、自分の人生を諦める事はしない。

「そ、そうか……」

「これからは、自分の為に生きるって決めたんだ。だからメイクもネイルも服も……誰かの好きじゃなくて、自分の好きを大切にしようと思って」

 あの日以降、ボクはお洒落を再び楽しむようにもなった。以前までは万人受けする、男の子に好かれやすいお洒落を意識していたけれど、今は違う。

 今は自分が綺麗で、可愛いと思うものだけを楽しみたい。だって、自分の人生なのだから。

「……そうか、それなら良かった。今の優姫も綺麗だと思うぞ」

「そう? ありがとう」

 今は自分が哀れで惨めだとは思わない。

 誰が相手だろうか、絶対に負けない。


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