病院に戻ると、案の定大人達に物凄く叱られた。
勝手に外に出たのだから、仕方ない。
けれど、あの日に外へ出て良かったと思う。あの日、芹那に出会わなければボクは哀れで不幸な弱者ままだった。
「優姫!」
「もう、もう少し静かに入って来られないの? 兄さん」
病室へ兄さんが慌ただしく飛び込んでくる。
相変わらず、兄さんは落ち着きが無い。
「お前……だって、病院を抜け出したって!」
「まぁね、散歩がしたくなってさ。心配させてごめん。けど、そのお陰でもの凄く元気になった!」
あの日以降、ボクは生気を取り戻した。
何故なら、覚悟を決めたから。何があっても、絶対に幸せになるという覚悟だ。
もう、自分の人生を諦める事はしない。
「そ、そうか……」
「これからは、自分の為に生きるって決めたんだ。だからメイクもネイルも服も……誰かの好きじゃなくて、自分の好きを大切にしようと思って」
あの日以降、ボクはお洒落を再び楽しむようにもなった。以前までは万人受けする、男の子に好かれやすいお洒落を意識していたけれど、今は違う。
今は自分が綺麗で、可愛いと思うものだけを楽しみたい。だって、自分の人生なのだから。
「……そうか、それなら良かった。今の優姫も綺麗だと思うぞ」
「そう? ありがとう」
今は自分が哀れで惨めだとは思わない。
誰が相手だろうか、絶対に負けない。