それから、また時が流れた。
ボクの体調は徐々に悪化してきていた。それが糸田の虐待が原因なのか、違うのかは分からないが……体力は持たないし、常に身体は痛いし、怠い。
医者は何だか色々と説明してくれたけれど、よく覚えていない。
その後は色々な合併症も引き起こして、とうとう透析まで必要な身体にもなった。
けれど、ボクはボク自身を哀れとも惨めとも思わない。身体がどれだけ不自由になろうが、心は死んでいない。ボクの覚悟は一切揺らいでいなかった。
医者の説明など無くても、ボクに残された時間が少ない事は分かっていた。
だけど、それが不幸だとは思わない。時間が無いのなら、残された時間でやるべき事を淡々とやるだけだ。
夜中の病室。周囲に誰もいない事を確認して、ボクはとある人物に電話をする。
「もしもし、お久しぶりです。はい、倉田 優姫です。いつも両親がお世話になっています。あなたのスポンサーの影響で、仕事はかなり順調らしいですよ。ああ、今日はお金の無心じゃありません。ただ、少し協力して欲しい事があるんです」
ボクには時間が無い。だから、やるべき事は何でもやる。例え悪魔の手を借りる事になっても。
やれる事は全てやると、ボクは覚悟を決めたんだ。
「ボク、同じ境遇の友達が欲しいんです。だから、犯罪被害者のサークルみたいなものを作りたくて……ええ、そうです。ゆくゆくは法人化して、ビジネスにしたいとも思っています。糸田議員には、そのスポンサーをして頂きたいなと思いまして。勿論、利益が出ればお礼もしますし、引き続き事件の事は口外はしません。ボクは交流の場を得て、あなたは小遣いを稼げる……悪い話じゃないでしょう?」
ボクの幸せは、周囲を不幸にするかもしれない。多くの人を傷付けて、運命を狂わせるかもしれない。
でも、それが何だ? そんな事知るか。
ボクはボクの為だけに生きる。それ以外の事なんて知らない、ボクは最期に笑って死んでやると決めたんだ。
「サークルの名前ですか? ああ、考えてありますよ。人の命を繋ぐと書いて……『繋命会』です」
もう、後戻りはしない。
今まで奪われた分、全てを奪い返す。
ボクの幸せは、ボクだけのものだ。