「お姉ちゃん、もう7時! 良い加減に起きないと遅刻するよ!」
私、雪代 葵は2階の部屋にズカズカと足を踏み入れ、お姉ちゃんのベッドに向かって叫ぶ。これは既に毎日の日課になっていて、特に珍しい事でもない。
「うーん……もうそんな時間……?」
「もう……昨日もまた夜更かししてたの? だらしないんだから」
「いやぁ、友達に勧められたドラマがめっちゃ面白くてさぁ……4時に寝た」
ベッドの中から、ボサボサの金髪を纏った女……いや、私の姉である雪代 茜がノソノソとベッドから這い出てくる。その姿はお世辞にも上品とは言えない。
「もう……ただでさえ学校が遠いんだから早く寝なきゃ駄目だよ。朝ご飯、もう出来てるから早く起きて食べて!」
「ん~……食べる~」
ベッドの中から這い出てきた彼女はだらしなく、情けない。床の上で蠢く彼女はまるで芋虫だ。
けれど、私にとってはそんな彼女……お姉ちゃんが世界の全てだった。強くて、頼もしくて、可憐なお姉ちゃんだった。
そんなお姉ちゃんと私は、1つ屋根の下で暮らしている。