私、雪代 茜は学校にいた。昨日は妹の葵と喧嘩になってしまい、朝は一言も言葉を交わさなかった。こんな事は何年振りだろう。
教室に入り、自分の席に腰を下ろすとすぐに友人達が私の周りに集まってくる。
「お、昨日サボりの茜じゃん」
「玲くんと2人でサボった茜だ~」
「えー! 2人で? 2人で何したの?」
私と玲くんが一緒に早退した事は既にクラス中に知れ渡っていた。
玲くんとは隣のクラスの男子で、最近少しずつ喋る様になった子だ。
そして、私が少し異性として気になり始めている存在だ。
昨日は廊下で玲くんと会った際に午後の体育をサボりたいという話になり、体調不良の名目でお互いに口裏を合わせて早退したのだ。
「いや、別に何もしてないから」
結局2人で早退したは良いものの、行き先も無くファミレスに入って食事やら勉強やらして時間を潰した。つまり、葵に言った事は何1つ嘘ではなかった。
「何? テンション低いじゃん」
「いやー実はさ、昨日学校サボってたのは妹にバレちゃってさ。それでちょっと喧嘩になってて」
「へー、そんな事で妹が怒るんだ。めっちゃ世話焼きじゃない?」
「妹っていうか、それ最早お母さんじゃん。うざ~」
「まぁ、年相応に可愛い所もあるんだけどね。過保護なのは否めない」
確かに学校はサボったが、犯罪を起こした訳でも無い。なのに、何でここまで葵に非難されないといけないんだろう。私だって年相応に遊びたいし、恋だってしたいのに……。
私の気持ちは晴れないままだった。
けれど、そんな事は関係無くチャイムは鳴り、午前の授業が始まろうとしていた。