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第15話 好意

 その日の授業が全て終わり、下校時間となる。

 今日はみんな予定がある様で、遊びに行く用事もない。けれど、真っ直ぐ家に帰る気にもならない。


 とりあえず駅前で時間でも潰そうかと思った時、廊下で後ろから声を掛けられる。


「茜!」

「お、玲くん」

 声の主は玲くん、昨日一緒に学校サボった子だ。

「昨日はありがとね。ファミレス代だけど半分払うよ」

「良いって、あのくらい。代わりに勉強も教えてもらったし」

「いや、でも女の子に払って貰う訳にはいかないからさ」


 玲くんはそう言って鞄から財布を取り出し、千円札2枚を私に手渡してくる。

 お金の事なんて私は気にしていなかったが、こうしてわざわざ支払ってくれる姿を見ると、その優しさに惹かれてしまう。


「……え、ありがと」

「またさ、テスト近くなったら一緒に勉強しない?」

「……うん、もちろん」


 こうして玲くんと話しているだけで嬉しいし、温かい気持ちになる。きっと、これが人を好きになるって事なんだろう。

 生まれてから初めての感情に、私は戸惑いつつも喜びを感じていた。


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