葵に見送られ、私は今日も学校へ登校した。
あれから葵とは良好な関係を築けている。
葵とは久し振りに腹を割って話をして、しっかりと今後の在り方について取り決めをした。
今までは自分がお姉ちゃんだからと色々と我慢していたり、諦めていた部分もあった。けれど、ここ最近はもっと自分の人生を自由に生きたいという気持ちが徐々に強くなってきたのも事実だ。
勿論、葵の事を放っておくとかそういう事ではない。ただ、もう少し私の事を信じて、自由に人生を謳歌させて欲しい……それが私の本心だった。
お母さんがいない事もあり、私の事を過剰に心配していた所が葵にもあったのだと思う。
けれど、私の気持ちを伝えたら葵もちゃんと分かってくれた。
私は私の人生を謳歌しながら、もちろん葵とも楽しく生きていく。
「茜!」
「あ、玲くん」
その日の帰り、教室を出ると玲くんにまた声を掛けられる。何だが最近、玲くんとよく会う様な気がして嬉しい。
「あれ、帰り? 1人なら一緒に帰ろうよ」
「あー、ごめん。私、これから生徒会の手伝いなんだよね」
「あ~……あのめっちゃ忙しいやつ? ご愁傷様」
「もう本当に最悪だよ! 誰もやらないからってくじ引きやらされて……まさかの私」
この手伝いというのは生徒会の手伝いにあたる業務だ。うちの学校は生徒会の活動がとても活発で、生徒会に所属する生徒は年中遅くまで生徒会室で業務に追われていると専らの噂だ。
そんな噂もあり、年々生徒会への加入率が下がっている……という事で各クラスの代表が選出され、生徒会業務の手伝いをさせられるという事になったのだ。
各クラスの代表が1ヶ月おきに交代をするので年中という訳ではないが、少なくとも今日から1ヶ月からは遊びやバイトの時間はかなり奪われる事が確定している。
「でもさ、それじゃあ当分バイトも入れないじゃん。お金キツくない?」
「あー……うん。前と同じ頻度で遊びに行くのはキツイなぁ……」
私は自分の遊びに使うお金は自分のバイトで稼いだお金しか使わない。理由としては、父親のお金に頼りたく無いというのが1番だ。
流石に学費等は父親に頼らざるを得ないけれど、俺が金を払ってやっているという風に威張られるのが癪なのだ。
「……そっか。それはちょっと残念だな……」
「え?」
「いや、茜がいないとみんなも盛り上がらないって言ってたしさ。この前のカラオケも茜がいてくれたらもっと盛り上がったのに。あ、そういえば来週の土曜日もみんなでカラオケ行く予定だけど、茜もどう?」
玲くんの誘いは嬉しかったが、今月は遊び過ぎた事もあり、あまり金銭的な余裕が無い。
父親に借りるのは論外だし、そうなると遊びの頻度を抑えるしかない。
「う~ん、今月結構ピンチだしな……」
「……じゃあさ、短時間で出来るバイトしない? かなりコスパ良いバイトがあるんだけど」
私が遊びの誘いを断ろうとした時、玲くんが急に小声になって私へ耳打ちをしてくる。
男子にそんな事をされたのが初めてだったので、私は少しドキッとする。
「え、それ絶対に怪しいやつじゃん!」
「全然! ここだけの話、うちの学校の女の子も結構やってるよ。例えば隣のクラスの田島とか松田とか」
田島、松田……面識は無いけれど、何となく存在は知っている。結構派手目で、目立つグループに属している女の子達だ。
玲くんは学校中の色々なグループに属しているので、とても顔が広い。
「へぇ……ちょっと興味はあるかも。話だけでも聞かせてよ!」
「じゃあさ、後で詳細連絡するから興味あったらまた教えてよ」
私は玲くんと約束をして、生徒会室へと向かった。