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第20話 人生

「お姉ちゃん、遅いなぁ……」


 私はリビングでお姉ちゃんの帰りをぼんやり待つ。生徒会の手伝いで下校が遅くなるのは分かっているし、それに伴って帰りも遅くなる事も分かっているけれど……でも、やっぱり家でずっと1人なのは辛い。狭い世界に1人で閉じ込められているみたいで、気が滅入る。


「ただいま~……」

「おかえり! お姉ちゃん!」

 すると、ようやく玄関からお姉ちゃんの声がして、私は子供みたいに玄関へ走り出す。

「はぁ……めっちゃ疲れた」

「お疲れ様。そんなに大変なの? 生徒会」

「うん….やる事が山積みでヤバい……お金出して欲しいくらい」

 お姉ちゃんはかなり疲れているみたいで、玄関にへたり込んでしまう。

 あれだけエネルギッシュなお姉ちゃんがここまで疲れているなんて、少し心配になる。

「とりあえずご飯食べる? お風呂も沸いてるけど」

「あー、ご飯はいいや。さっきコンビニで買い食いしちゃったからお腹減ってない」

「そう……」

 せっかく一緒にご飯を食べるの待っていたのにと、少しムッとするけれど私は堪える。高校生なら買い食いくらいする……これくらい当たり前、こんな事で口うるさく言っちゃいけない。私は自分にそう言い聞かせた。

「あと、明日からしばらく夜ご飯要らないかも。帰り遅くなるし……先に食べてて良いから」

「え、でも……」

「……大丈夫。ちゃんと自分のバイト代の中でやりくりするから」

 お金の事じゃなくて、私はただお姉ちゃんと一緒にご飯を食べたかっただけなのに。

 けれど、それを要求するのは私のわがままだ。疲れているお姉ちゃんをこれ以上困らせてはいけないと、私はまた自身の感情を飲み込む。


「……分かった」

 お姉ちゃんの人生に口を出しちゃいけない。

 お姉ちゃんは私だけのものじゃないんだ。

 私は自分に言い聞かせながら、1人リビングへ戻った。


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