「……お姉ちゃんから誘ってくるなんて、珍しいね。何かあった?」
脱衣所で服を脱ぎながら、私はお姉ちゃんへ問う。基本は私がお姉ちゃんをお風呂に誘う事が多かったので、少し不思議に思う。
「いやいや、ここ最近は別々だったじゃん? だから、葵が寂しい思いをしてるかなーって」
「べ、別に寂しくないし! お風呂くらい1人で入れるから!」
お姉ちゃんに揶揄われて、私は少しムキになる。
確かにお風呂くらい1人で入れるけれど、ここ最近は家でもずっと1人だったし、人恋しいというのが本音だ。
……よくよく考えたら、お姉ちゃんに甘え過ぎなのかなとも思うけれど。
「じゃあ、1人で入る?」
「……一緒に入ろ」
わざとらしく脱衣所から出ようとするお姉ちゃんの手を、私はそっと握り締める。
それを見て、お姉ちゃんが笑う。
私はこんな日常が続くだけで良かった。
身の丈以上のものなんて要らない。
ただ、この小さな幸せがいつまでも続いてくれるだけで良かったのに。