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第25話 事件

 あれからまた1週間程が経った頃か。

 また生徒会の多忙な日常が始まり、お姉ちゃんの帰りはほぼ毎日遅くなっていた。

 勿論、生徒会の話は聞いていたし、最近はお姉ちゃんとも忙しい中でもコミュニケーションが取れていたので、私自身もそこまで不安や心配は感じていなかった。


 けれど、この日に1つ事件が起きた。

 私の信頼が裏切られる出来事がこの日に起こったのだ。


「ただいまぁ~……」

 夜、いつもより明らかに気の抜けた声でお姉ちゃんが帰宅する。

 私はすぐに玄関に向かったが、一瞬でお姉ちゃんの様子が普段とは違う事に気付く。

「ちょっと、お姉ちゃん……? 何やってたの?」

「えー? 生徒会……」

 お姉ちゃんは明らかに千鳥足で、顔も紅潮している。それに、仄かに香るアルコールの匂い……お姉ちゃんがお酒を飲んでいる事は明白だった。

「……まさか、お酒飲んでるの……?」

「う~ん、ご飯の時にちょっと貰っただけ……」

 私の問いかけにも、お姉ちゃんは気の抜けた返事を朦朧としている。

「何考えてるの!? お姉ちゃんは高校生で……お酒なんて!」

 私は柄にも無くお姉ちゃんを怒鳴りつける。

 無性に腹が立って、そして悲しかった。

 お姉ちゃんは天真爛漫で、危なっかしい所は昔からあったけれど、規律やルールを破る様な人では無かった。そんなお姉ちゃんが好きだった。

 なのに、今目の前にいるお姉ちゃんは私の知っているお姉ちゃんでは無い。

「一口、貰っただけだってぇ……」

「一口貰ったって……誰に!?」

「……分かんない~」

 お姉ちゃんは私の怒りも気に留めず、呑気に酔っ払っている。

 それを見て、私は更に怒りを覚える。

「……まさか、一緒に学校サボってたあの男?」

「……玲くん……じゃないよ」

「じゃあ誰!?」

 私は我慢の限界を超え、お姉ちゃんの肩を掴んで起こす。けれど、お姉ちゃんは一切反応しない。

「……」

「……お姉ちゃん!」

 私の気持ちなど知らず、お姉ちゃんは静かに寝息を立てていた。


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