あれからまた1週間程が経った頃か。
また生徒会の多忙な日常が始まり、お姉ちゃんの帰りはほぼ毎日遅くなっていた。
勿論、生徒会の話は聞いていたし、最近はお姉ちゃんとも忙しい中でもコミュニケーションが取れていたので、私自身もそこまで不安や心配は感じていなかった。
けれど、この日に1つ事件が起きた。
私の信頼が裏切られる出来事がこの日に起こったのだ。
「ただいまぁ~……」
夜、いつもより明らかに気の抜けた声でお姉ちゃんが帰宅する。
私はすぐに玄関に向かったが、一瞬でお姉ちゃんの様子が普段とは違う事に気付く。
「ちょっと、お姉ちゃん……? 何やってたの?」
「えー? 生徒会……」
お姉ちゃんは明らかに千鳥足で、顔も紅潮している。それに、仄かに香るアルコールの匂い……お姉ちゃんがお酒を飲んでいる事は明白だった。
「……まさか、お酒飲んでるの……?」
「う~ん、ご飯の時にちょっと貰っただけ……」
私の問いかけにも、お姉ちゃんは気の抜けた返事を朦朧としている。
「何考えてるの!? お姉ちゃんは高校生で……お酒なんて!」
私は柄にも無くお姉ちゃんを怒鳴りつける。
無性に腹が立って、そして悲しかった。
お姉ちゃんは天真爛漫で、危なっかしい所は昔からあったけれど、規律やルールを破る様な人では無かった。そんなお姉ちゃんが好きだった。
なのに、今目の前にいるお姉ちゃんは私の知っているお姉ちゃんでは無い。
「一口、貰っただけだってぇ……」
「一口貰ったって……誰に!?」
「……分かんない~」
お姉ちゃんは私の怒りも気に留めず、呑気に酔っ払っている。
それを見て、私は更に怒りを覚える。
「……まさか、一緒に学校サボってたあの男?」
「……玲くん……じゃないよ」
「じゃあ誰!?」
私は我慢の限界を超え、お姉ちゃんの肩を掴んで起こす。けれど、お姉ちゃんは一切反応しない。
「……」
「……お姉ちゃん!」
私の気持ちなど知らず、お姉ちゃんは静かに寝息を立てていた。