お姉ちゃんがお酒を飲んできたあの日からも、私達は普段通りに接し、生活をしていた。
いや、正確には私が普通を装っているだけというのが正しいか。本当は心の中では感情がぐちゃぐちゃだ。
「じゃあ、行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
「今日は、遅くなりそう?」
「うーん、多分……だけど、極力早く帰るよ!」
「……分かった!」
そうしてお姉ちゃんはいつも通り玄関を出て行く。私の感情などまるで考慮していないかの様な、いつも通りの振る舞いだ。
「……私が信じてあげなきゃ、ダメなんだ」
お姉ちゃんが出ていき、1人きりの玄関で私は自らの両肩を抱いて呟く。私が疑えば、またこの間の様にお姉ちゃんと言い合いになってしまう。
そんな結末が目に見えているからこそ、私が耐えなければならない。
「けれど、信じられないよ……お姉ちゃんの事」
信じて、耐えなければならない。
頭では分かっているけれど、理屈では片付けられない。心の中では絶え間無く不安が満ち溢れている。
一体、いつまでこんな事が続くのだろう。
お姉ちゃんは私にとって大切な人で、大好きな人だ。
けれど、私はいつまでお姉ちゃんに振り回され続けなければいけないのだろう。不安と共に、そんな感情までもが芽生え始めていた。