その日の夜、お姉ちゃんの帰りは相変わらず遅かったが、私はお姉ちゃんと会話をする為にわざと晩御飯の時間も遅くした。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「何? 改まって」
「最近、竹島先生に会ったりとかした?」
とうとう私はお姉ちゃんへその言葉をぶつけた。もし塚原の話が本当なら、何かボロを出すはず。
けれど、私の言葉に対してお姉ちゃんの表情が変わる事は無かった。
「いや、会ってないよ? だって、最近は葵が1人で病院に行くって言うし、会う機会も無いじゃん」
「そう、だよね」
「え、何?」
「いや、この前の診察の時に街でお姉ちゃんっぽい人を見かけたって、竹島先生が言ってたから……」
「ふーん、全然気付かなかったけどなぁ……」
「……そうなんだ」
私から竹島の名前が出ても、お姉ちゃんは全く動揺していなかった。そして、何の躊躇いもなく『竹島と会っていない』と嘘をついた。
分かっていた事だけれどこんな簡単に、そして堂々と嘘をつかれた事に私は再び傷付いた。
そして、失望した。