その日の夕方。塚原の言う通り、お姉ちゃんはいつもより早い時間に帰ってきた。
またしても塚原の言う通りに事は進んでいる。
「ただいま~」
「……本当に、帰って来た」
「え?」
「ううん、何でもない……おかえり、今日は早かったね」
やはり塚原の力は本物のようだ。1度だけではなく2度もお姉ちゃんの行動を見通し、しっかり言い当てている。これは疑いようのない事実だ。
「うん、今日は生徒会が急遽休みになったからさ。てか……もう晩御飯作ったの!?」
「あ、うん……何か、今日はお姉ちゃんが早く帰って来る様な気がしたから、気合いが入り過ぎちゃって……」
「何それ、エスパー?」
「……そうかもね」
全ては塚原の予言のおかげなのだが、勿論お姉ちゃんはそんな事は知らない。もしエスパーだと言うのならそれは塚原だろう。
「じゃあ、久々に一緒にお風呂入る?」
「お姉ちゃんがそう言うなら……まぁ、良いよ」
「なんか生意気なんだけど!」
最早、お姉ちゃんの援助交際の事など忘れかけていた。自身が積んだ徳が実り、運命が良い方向に動き始めている……それが純粋に嬉しかった。
塚原の言葉を信じれば、自身の運命が変われば、周りの人間の運命も変える事が出来る。
つまり私の運命が変われば、お姉ちゃんの運命だって変えられる。
援助交際などせず、また私を1番に考えてくれる優しくて頼もしいお姉ちゃんに、戻ってもらう事だって出来るはず。
その為にもっと頑張らなければいけないと、私は自分自身へ言い聞かせた。