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第46話 指導者

 それから数日が経過し、再び塚原から連絡が入った。


『最近はどうですか?』

「はい、最近は定例会にも参加するようになって、とても楽しいです!」

『そう、それは良かったです』

 ここ数日、お姉ちゃんの帰りが早い事が続いていた。私が塚原の言う通りに行動してから、明らかに帰りが早い日が増えたのだ。

 講座の受講を終え、次のステップとして塚原からは定例会の参加を指示された。

 定例会とは繋命会の信者同士で行われるもので、自身の取り組み、そして徳を積んだ事による成功体験を共有する場だ。全国にいる信者がオンラインで参加をするのだが、これだけ大勢の人間と何かを共有する事自体が私にとっては初めての体験だった。


「今までは1人でただ時間が過ぎるのを待つだけの退屈な人生でしたが、ここ最近は違うんです。少しずつ日常に変化が出てきていますし、良い方向に物事が進んでいるような気がします」

「それは良かった。それに、最近は茜さんの帰りが早い日も増えてきている様だし、順調に葵さんの運命が変わってきていますね、素晴らしい」

「はい……最初は正直に言うと半信半疑だったんですが、全てが先生の言う通りになって……本当にありがとうございます」

 最初は半信半疑ではあったけれど、全てが塚原……いや、先生の言う通りになっている。このまま先生の言う通りに事を進めれば、私の運命もお姉ちゃんの運命も変える事が出来る。いや、私が必ず変えてみせる。


「けれど、まだ鍛錬は始まったばかりですから気を抜かずに努力を続けていきましょう。そうすれば、葵さんと茜さんの運命は良い方向へと導かれるでしょう」

「はい!」


 私の中で、先生は完全なる指導者になっていた。

 そして、繋命会は私にとって初めて出来た仲間達。

 私は生まれて初めて、生きている事が楽しいと思える様になっていた。


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