やがてタクシーが家に到着した。
そこからタクシーで病院へ向かい、あっという間に診察室の中へ辿り着いてしまった。
「こんにちは、葵ちゃん。それに久し振りだね! 茜ちゃん」
「はい、お久し振りです。竹島先生」
そして、当然だが診察室には竹島がいる。
お姉ちゃんと竹島はわざとらしい挨拶を交わす。久し振りな訳が無いのに……。
「それで、今日はどうしたの?」
「それが、昨日から葵が高熱で……さっきご飯も食べたんですけど、戻してしまって……」
「なるほど。葵ちゃんは持病の事もあるし、心配だね。念の為、検査しようか」
また、竹島と密室で忌まわしい診察が始まろうとしている。不快極まりないが、今は体調不良という事もあり抗う気力すらない。
数分、我慢すれば終わる。
「はい、お願いします。葵、外で待ってるね」
そうして、お姉ちゃんは私を残して診察室を出て行ってしまった。
「……それじゃあ、脱ごうか。色々と検査するから」
「……はい」
1秒でも早く診察を終わらせる為、私は竹島の指示に素直に従う。上着を脱ぎ、中に着ていたシャツのボタンを外し、脱ぐ。
「じゃあ、まずは心音から……」
下着姿になった私の胸元辺りに、竹島の指が触れる。不快を通り越して、恐怖を感じるくらいだ。
「……先生」
「何かな?」
高熱のせいか、私の頭はボーッとしていた。
その影響なのか、勢いで私は竹島に言い放ってしまう。
「お姉ちゃんと、外で会ってますよね? 2人で何をしているんですか?」
言葉を口にした瞬間、自分でも驚いた。
こんな事を聞くつもりは無かったのだが、竹島を目の前にすると、何だが無性に怒りが湧いてきて……ついお姉ちゃんとの密会について問い詰めたくなったのだ。
「……っ」
私の言葉に、竹島は驚いた表情を浮かべていた。
「僕と、茜ちゃんが?」
「私、見ちゃったんです。駅前のファミレスで2人でいる所。しかも2人で会っているの……1回だけじゃないですよね?」
私の追撃は止まらない。
ここまで来たら、真実を確かめたい。
お姉ちゃんに直接確かめる勇気は出なかったけれど、今この瞬間……竹島には勇気を持って確かめられる気がした。
「見間違えじゃないかい?」
「そんなはずはありません。この目でしっかり見ましたから」
「……」
今思えば、最初からこうしておくのが1番話が早かったのかもしれない。けれど、私は臆病で弱虫で……それが出来なかった。
今は高熱で情緒がどうかしているから、勢いでこうして言葉を発する事が出来ているだけだ。
「答えられないような事をしているんですか? お願いですから、姉に妙な事をするのはやめてください……」
私の勢いに、竹島は完全に動きを止めていた。
そして、私の言葉を聞き終えると竹島は大きく溜め息をついた。
「はは……弱ったな、どうやら葵ちゃんには妙な誤解をされてしまっているようだな……」
「誤解?」
「はぁ……茜ちゃんには言わないでくれと口止めされていたんだが、仕方無い。話すよ、僕が茜ちゃんと会って、何をしていたのか」