翌日、午前中に先生は私を訪ねてきた。
いつも通り、私は先生をリビングへと案内する。
もう先生と会う必要も無いと思っていたのに……。
「供物も、最近は供えられていないのですね」
お茶を啜りながら、先生は横目で仏壇の方へ目をやる。ここ1週間程は供物を含め、繋命会としての活動は殆ど行っていない。
何故なら、私の中で竹島とお姉ちゃんの密会については決着がついたと思っていたからだ。
「あ……すみません」
「それで、この間の話の続きですが」
そして、先生はお茶を飲み干して姿勢を正す。
「はっきり申し上げますと、2人の言葉は嘘です。残念ながら葵さんは再び嘘をつかれ、騙されたのです」
「でも、2人ははっきりと……」
「嘘をついている様には見えない……ですか? では、この写真を見てください。あまり見せたくはなかったのですが……これを見ればご理解頂けるでしょう」
すると、先生は大きめの封筒を鞄から取り出し、私へ手渡してくる。
それを受け取り、私は中身を確かめる。
中には、数枚の写真が入っていた。
「これ……」
「間違いなく茜さんと竹島の2人でしょう。この日はかなりお酒も飲んでいた様で、そのまま2人でホテルの中へ入っていきました。どう考えても、葵さんの治療費について相談するだけの関係性とは思えませんが……」
その写真には、竹島とお姉ちゃんが写っていた。
けれど、その写真の2人は私の知る2人の姿ではなかった。2人とも酷く酔っている様子で、顔が紅潮している。
それに、お姉ちゃんは普段以上に露出が多く、派手な服装。まるで水商売のキャストの様な出立ちだ。
そして、そんなお姉ちゃんの腰に手を回し、歓楽街を歩く竹島……一目で分かる、まともな関係性ではない。
そして、次の写真では……ホテルの入口へと2人並んで歩いていく姿がそこには記録されていた。
「そんな……」
「お辛いでしょうが、これが現実なのです。あなたはまた……嘘をつかれ、騙されたのです。この世には……平然と嘘をつき、他人を傷付ける人達がいるのです」
「うそ……」
私は無意識のうちに涙を流していた。
悲しい? 苦しい? この感情は何と呼ぶのだろう。分からない。
ただ、今は嗚咽と吐き気が交互に身体の中から込み上げてくるだけだ。
「うっ……」
私は咄嗟に口元を手で押さえたけれど、間に合わず吐瀉物がテーブルへと吐き出される。
吐いても吐いても、気持ち悪さは増すばかりだ。
「何も行動せず、立ち止まる事は簡単です。けれど、そのままではあなたは一生……裏切られ、足蹴にされ続けるだけです。そして、弱者のまま人生を終えるでしょう」
「はぁ……はっ……」
胸が酷く痛み、頭が鉛みたいに重い。
けれど、先生の言葉はすんなりと脳内へ吸い込まれてくる。
「あなたが望むのなら、私はいつでも力を貸しますから」