「まず、悪霊を鎮める為には穢された肉体を殺す必要があります。それを、これから行います」
「殺すって、竹島をですか?」
「既にコレは竹島ではありません。悪霊です」
私の言葉に、先生は耳を傾けない。
自分の言葉に揺るぎない自信と正当性があるという様子だ。
「でも、それって……」
「人殺しですか? いいえ、コレはもう人間ではありません。思い出してください、コレが今まで何してきたのかを。何の罪もない少女達を食い物にし、自らの欲を満たし、金を稼ぎ……これが人間のやる事ですか?」
浴槽の中で蠢く竹島にもう1度目をやる。
手首と足首を完全に失い、浴槽から出ようとしても力が入らず上手く身体が動かせないようだ。出血により意識も朦朧としているのか、その動きに力は込められていない。
そんな竹島から咄嗟に目を逸らすと、先生の側に控えていた暴力団風の男の足元に、何か赤く汚れたものが置かれている事に気が付く。
それはチェーンソーだ。かなり使い込まれているのか刃の一部は錆び掛けていたが、飛び散った血痕は真新しい。恐らくこれで竹島の手首と足首を切断したのだろう。
「私は竹島の犯した罪を許す事が出来ません。少女達の運命を自らの欲の為に歪める様な……そんな悪霊は、この手で除霊しなければなりません」
「でも! そ、それなら警察に通報して……」
「竹島は複数の政治家にも自身の盗撮映像を『作品』として販売しています。つまり、警察に通報した所で碌な裁きも受ける事はないでしょう。だからこそ、我々の手による直接的な断罪と除霊が必要なのです」
私の言葉など先生にとっては何の意味も持たなかった。
「これから、コレに取り憑いた悪霊の除霊を行います」