お姉ちゃんを送り出し、その日の午前中には繋命会の定例会がスケジューリングされていた。
しかも、今回の定例会は普段の定例会とは異なり、繋命会の幹部クラスの人間のみが集まる定例会だ。
そして、そんな場に私は先生直々に招集されたのだ。
『皆様、集まりましたね。では、今回の定例会を始めたいと思いますが……その前に1つ、皆様へ大変嬉しい報告があります』
定例会の進行を行うのは先生なのだか、先生は定例会を始める前に1つ報告があると言う。
『先日、雪代 葵さんが初めて悪霊の除霊を行い、見事に完遂されました!』
そして、先生が拍手をすると同時に参加している幹部からも大きな拍手がされる。
そう、私が今回この定例会に呼ばれたのは先日の出来事……竹島、いや悪霊を除霊した事に起因する。
『素晴らしい! まだお若いと聞いていましたが、もうそんな段階にまで進まれているとは……』
『先生から熱心な方だとは聞いていましたが、本当のようですね。おめでとうございます』
幹部は中年から初老が殆どの顔ぶれだったが、私に対して惜しみない拍手と賞賛を浴びせてくれる。
『葵さん、一言頂けますか?』
「あ、ええと……私は何も」
『謙遜は不要です。最後はあなた自身の手で悪霊を仕留めたではないですか』
「あ……」
あの日、確かに私が水道の蛇口を捻り、竹島を殺した。それまでの過程はさておき、最後に手を下したのは間違いなく私だ。
『まだ実感が湧かないでしょう。けれど、あなたは正しい事をした……それは間違いありません。私達がそれを保証します。あなたはこの世から悍ましい悪霊を除霊させたのです』
「はい……」
世間では私は単なる人殺しなのかもしれない。
けれど、この繋命会では違う。悪霊を除霊した者は褒め称えられ、尊敬される。
事実、私より遥かに年上であろうこの幹部達は私に対し尊敬にも似た眼差しを送っている。
『慣れてくれば、外注の依頼で除霊をこなす事も出てきます。それはより多くの弱き人達の力になれる、とても素晴らしい事なんです』
「私が、力に?」
『はい、葵さんにしか出来ない事です。痛みを知るあなただからこそ、このお役目を果たす資格と義務があるのです』
「……ありがとうございます」
生まれてきてから、私は自分自身をずっとお荷物だと思っていた。
子供の頃からお姉ちゃんがやりたい事もやれず、我慢を強いられていた事も、全て私が存在しているせいだと思っていた。
けれど、今は違う。
私が存在し、行動する事で救われる人達がいる。変えられる運命がある。
繋命会と先生は、私の存在そのものを肯定してくれたのだ。