「妹、葵ちゃんって言うんだ。可愛いじゃん」
玲くんがニヤニヤしながら私に言う。
「でも、玲くんは明らかに警戒されてたけどね」
葵は家に籠りがちな事もあり、内向的な性格だ。特に男性には耐性が無く、玲くんのような派手な男性は特に苦手だろう。
「ごめんね。悪い子じゃないんだけど、昔から人見知りで……あんまり普段は外の人と会わないからびっくりしたんだと思う」
「学校、行ってないんだっけ?」
「うん、身体が弱くて……普段はずっと家にいるんだ。だから外の人に対しては懐疑的でさ、ごめん」
「え~、何だか可哀想……私じゃ友達になれないかな?」
「亜里沙とは水と油だと思うよ。葵は真面目だから」
「私が不真面目みたいじゃん!」
亜里沙に関しても派手な外見と軽いノリ……葵が苦手とするタイプの女性だろう。葵と仲良くなってくれれば勿論嬉しいが、葵が亜里沙のノリについていけるとは思えない。
「けどさ、サボりの現場を見られてたとは驚いたよ。それは嫌われるよね、お姉ちゃんを俺に取られたら」
「あはは……」
確かにあの日、葵にはかなり怒られた。
それは学校をサボった事に対してだと思っていたが、今思えば私が玲くんと親しげにしていた事も葵は気に入らなかったのかもしれない。
「妹ちゃん、玲くんと茜が付き合ってると思ってるんじゃない? あの様子だと」
「いや、無い無い! 友達だってちゃんと説明したし!」
「ふーん……そうなんだ」
葵は私の事が好きだ。勿論、私も葵が好き。
けれど、葵は昔からその好きが一線を越えかける事がある。異常なまでに私の事を管理したがったり、私の生活に介入しようとしてきたり……。
私の事を心配してくれての行動なんだとは理解しているが、私にだって私の人生がある。
「てか、何して遊ぶ? なんかゲームでもやろっか」
「それも良いけど……私、茜の卒アル見たい!」
「えっ」
「あ、俺も見たい」
けれど、今は高校で友達も作ってそれなりに楽しくやっている。
今まで、葵の為に何かを犠牲にしてきた人生だったけれど、その運命も変わり始めた気がする。