「えー! これ茜なの!」
「そう……てか、恥ずかしいからそんなに見ないで……」
亜里沙が私の卒業アルバムを引っ張り出し、中学時代の私を見て叫ぶ。
「髪も黒だし、メイクもしてないし……全然今と雰囲気が違う。部活とかやってたの?」
「あー、部活はあんまりやってなかった。葵の事もあったし……」
この頃は部活もせず、勉強と葵の世話で手一杯だった。特にお母さんが自殺してからは毎日、葵と共に生きる事だけで精一杯だった。
「ふーん……何か茜ってさ、結構真面目だよね。頭も良いし……」
「別にそんな事はないけど……」
「いや、中学生で勉強しながら妹の面倒まで見るとか、私なら絶対に無理だもん。マジで尊敬するわ」
「まぁ、お姉ちゃんだし」
亜里沙が言う通り、私はきっと真面目で大人びた中学生だったと思う。けれど、私はその役割を強いられる事が辛かった。
私だって部活をしたり、遊びに行ったり……色々な事をしたかったというのが本音だ。
「確かに凄いけどさ、妹が中心の人生って……何か勿体なくない? もっとわがままに生きれば良いのに」
「え?」
私と亜里沙の会話に、玲くんが入って来る。
「だって、茜の人生は茜のものじゃん。妹の為だけの人生って訳じゃないでしょ」
「……」
「ああ、ごめん。俺くらいになると好き勝手に生き過ぎて、親とも絶縁状態だけどさ……茜を見てるとそこまで真面目にならなくても良いんじゃね? って思う時はたまにあるよね」
玲くんの言葉で、何だか自分が肯定されたような気がした。側から見れば高校に入って、遊び回っている不良少女に見られてしまうかもしれない。けれど、私にとっては今まで犠牲にしてきた青春を1つずつ取り戻している感覚なのだ。
「……2人のおかげで、高校に入ってからは自由に楽しくやれてるよ。その分、葵は心配してるけどね……」
「大丈夫、大丈夫! 私が妹ちゃんと友達になるから!」
「だから、亜里沙とは水と油だって……」
「いやいや、私こう見えて年下の子から結構慕われてるから!」
ここ最近、葵中心の生活ではなくなってきた事が楽しかった。けれど、それと同時に私は罪悪感も感じていた。
私だけ楽しんで良いのか。お姉ちゃんとして、葵にもっと構ってあげないといけないんじゃないか、と。
けれど、玲くんの言葉で心が随分と軽くなった。
私にだって、自由を楽しむ権利があるんだ。