「じゃあ、俺ら帰るね」
「うん! たまには家も楽しかったね!」
「それじゃあ、葵ちゃんによろしく!」
「はいはい」
2人が帰る頃には空はもう真っ暗になっていた。
部屋で卒業アルバムを見たり、学校での話をしたり……それだけの時間だったが、とても心地良かった。
「……葵~」
そして、リビングに降りると葵がソファに座りテレビをボーッと見ていた。
事前に連絡もしていなかったし、恐らくあの2人は葵が苦手とする人種。機嫌は悪いだろう。
「ごめん、怒ってる?」
「……別に」
葵はそう言うが、その表情は明らかに不機嫌そうだ。予想はしていたが、ここまで露骨だとは思っていなかった。
「いや、ごめん。いきなり2人も連れて来ちゃって」
「だから怒ってないって」
「いやさ、見かけは派手だけど根は良い子達なんだ。高校に入ってから初めて出来た友達だから……大切にしたくて。だから、ごめん! 今度から連れてくる時は事前に連絡入れるから、また連れて来ても良い?」
私は葵の前で手を合わせ、お願いをする。
葵は厳しいけれど、私がこうしてお願いをすれば何事も断った事は無い。
「……別に私は良いよ。ただ、あんまりうるさくはしないでね。ご近所迷惑だから」
「ありがとう……っ! あ、それと亜里沙が葵と友達になりたいって言ってたよ」
「勘弁してよ……」
「そう言うと思った。けど、良い子だよ」
「いや、ああいうタイプの人がそもそも苦手だから」
「まぁ、そう言わずに一回話してみたら? 友達いたら、きっと楽しいよ」
「私は、お姉ちゃんがいればそれで……」
葵は釈然としない様子だったが、一先ずまた2人を家に呼ぶ事自体は出来そうだ。
それに……実現出来るかどうかは別として、私は葵と亜里沙が友達になってくれたら嬉しい。
何故なら、友達がいるだけでこの世界は一気に輝いて見えるのだから。