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第81話 不機嫌

「じゃあ、俺ら帰るね」

「うん! たまには家も楽しかったね!」

「それじゃあ、葵ちゃんによろしく!」

「はいはい」

 2人が帰る頃には空はもう真っ暗になっていた。

 部屋で卒業アルバムを見たり、学校での話をしたり……それだけの時間だったが、とても心地良かった。


「……葵~」

 そして、リビングに降りると葵がソファに座りテレビをボーッと見ていた。

 事前に連絡もしていなかったし、恐らくあの2人は葵が苦手とする人種。機嫌は悪いだろう。


「ごめん、怒ってる?」

「……別に」

 葵はそう言うが、その表情は明らかに不機嫌そうだ。予想はしていたが、ここまで露骨だとは思っていなかった。

「いや、ごめん。いきなり2人も連れて来ちゃって」

「だから怒ってないって」

「いやさ、見かけは派手だけど根は良い子達なんだ。高校に入ってから初めて出来た友達だから……大切にしたくて。だから、ごめん! 今度から連れてくる時は事前に連絡入れるから、また連れて来ても良い?」

 私は葵の前で手を合わせ、お願いをする。

 葵は厳しいけれど、私がこうしてお願いをすれば何事も断った事は無い。


「……別に私は良いよ。ただ、あんまりうるさくはしないでね。ご近所迷惑だから」

「ありがとう……っ! あ、それと亜里沙が葵と友達になりたいって言ってたよ」

「勘弁してよ……」

「そう言うと思った。けど、良い子だよ」

「いや、ああいうタイプの人がそもそも苦手だから」

「まぁ、そう言わずに一回話してみたら? 友達いたら、きっと楽しいよ」

「私は、お姉ちゃんがいればそれで……」


 葵は釈然としない様子だったが、一先ずまた2人を家に呼ぶ事自体は出来そうだ。

 それに……実現出来るかどうかは別として、私は葵と亜里沙が友達になってくれたら嬉しい。

 何故なら、友達がいるだけでこの世界は一気に輝いて見えるのだから。


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