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第89話 繋がり

 その日はお姉ちゃんと亜里沙と3人でふざけあっていたら、あっという間に時間が過ぎていた。

 元々は他人との関わりや繋がりといったものは苦手だったし、煩わしいと思っていた。

 けれど……この時間は悪くはなかった。むしろ、楽しいと思えるくらいだった。


 その日の夜、私のスマートフォンに着信が入る。

 すっかり忘れていたが、先生からの着信だ。


「はい」

『もしもし、葵さん?』

「先生……どうされましたか?」

『いえ、少し話をしたかっただけです。ここ最近、お家に出入りしている人が増えていますね。お友達ですか?』

 先生の言葉に、少しドキッとする。

 家の中の事であっても、先生には全て見透かされている。先生の能力があれば、この程度を見透かす事くらいは造作もない事だろう。

「あ……あれはお姉ちゃんの友達で……私もたまに話したりはしますけど」

『ああ、そうでしたか。友達や仲間が増えるのは良い事です。それが繋命会以外でも。ただ……1つだけ……忠告がしたくお電話をしました』

「はい……」

『繋命会に関する事は、絶対に知られない様にお願いします。分かっているとは思いますが、我々の取り組みに賛同するどころか、時には障害になり得る可能性もあります』

「はい……」

 そんな事、私だって分かっている。知られてはいけない、知られたくない。何故なら、常人の感覚では到底理解されない事が目に見えているから。

 だから、知られてはならない。

『もし、知られてしまった場合……相応の対処をしなければなりません。ご留意くださいね』

「……分かっています」

 もし、私の正体を知られる事があれば……人間関係含め全てが崩壊するだろう。それは私自身も望んでいる結果ではない。

『ですが、ここ最近のあなたは何だか楽しそうですね。初めて出来たお友達……大切になさってください』

「……ありがとうございます」

『これも、葵さんがあの日に悪霊の魂を浄化し、徳を積んだお陰でしょう。引き続き励んでください』

「はい! ありがとうございます!」

 繋命会の活動を止めるつもりはない。何故なら、幸福を追求する為に今の私には必要な事だから。

 けれど、今ある生活も人間関係も壊したくない。欲張りかもしれないけれど、1度きりの人生なら、少しくらい欲張りでも良いと思う。


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