その日はお姉ちゃんと亜里沙と3人でふざけあっていたら、あっという間に時間が過ぎていた。
元々は他人との関わりや繋がりといったものは苦手だったし、煩わしいと思っていた。
けれど……この時間は悪くはなかった。むしろ、楽しいと思えるくらいだった。
その日の夜、私のスマートフォンに着信が入る。
すっかり忘れていたが、先生からの着信だ。
「はい」
『もしもし、葵さん?』
「先生……どうされましたか?」
『いえ、少し話をしたかっただけです。ここ最近、お家に出入りしている人が増えていますね。お友達ですか?』
先生の言葉に、少しドキッとする。
家の中の事であっても、先生には全て見透かされている。先生の能力があれば、この程度を見透かす事くらいは造作もない事だろう。
「あ……あれはお姉ちゃんの友達で……私もたまに話したりはしますけど」
『ああ、そうでしたか。友達や仲間が増えるのは良い事です。それが繋命会以外でも。ただ……1つだけ……忠告がしたくお電話をしました』
「はい……」
『繋命会に関する事は、絶対に知られない様にお願いします。分かっているとは思いますが、我々の取り組みに賛同するどころか、時には障害になり得る可能性もあります』
「はい……」
そんな事、私だって分かっている。知られてはいけない、知られたくない。何故なら、常人の感覚では到底理解されない事が目に見えているから。
だから、知られてはならない。
『もし、知られてしまった場合……相応の対処をしなければなりません。ご留意くださいね』
「……分かっています」
もし、私の正体を知られる事があれば……人間関係含め全てが崩壊するだろう。それは私自身も望んでいる結果ではない。
『ですが、ここ最近のあなたは何だか楽しそうですね。初めて出来たお友達……大切になさってください』
「……ありがとうございます」
『これも、葵さんがあの日に悪霊の魂を浄化し、徳を積んだお陰でしょう。引き続き励んでください』
「はい! ありがとうございます!」
繋命会の活動を止めるつもりはない。何故なら、幸福を追求する為に今の私には必要な事だから。
けれど、今ある生活も人間関係も壊したくない。欲張りかもしれないけれど、1度きりの人生なら、少しくらい欲張りでも良いと思う。