目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第92話 食卓

 その日、結局夕方ごろまで亜里沙は家にいた。

 2人で勉強したり、テレビを見たり……そんな事をしていたらあっという間にこんな時間だ。


「亜里沙さん、お姉ちゃんもう帰ってくるって」

「あ、意外と今日は早いね」

「せっかく亜里沙が来てるならご飯買って早く帰るって。食べていきますよね? ご飯」

「え、良いの? マジで」

「別に良いですよ、というかお姉ちゃんが一緒に食べたいって」

「やったー!」

「じゃあ、私もご飯の支度するのでゆっくりしててください」

 この食卓にお姉ちゃんと私以外が加わるなんて、いつ振りだろう。お父さんももう何年も一緒にご飯なんて食べていないし、本当に久し振りだ。

 いつもより豪勢なご飯を作ろうと、私は気合いを入れてエプロンを締める。


 ひとまず家にある材料で料理を始めた頃、後ろから亜里沙が話しかけてきた。

「私も手伝おうか?」

「料理、出来るんですか?」

「……千切りくらないなら」

「余計に手間が増えそうなので、テレビでも見ててください」

「はい……」

 失礼だけど、亜里沙が調理出来るとは思えない。

 けれど、そんな風に声を掛けてくれるだけで私は嬉しかった。お姉ちゃんなんて、殆ど手伝ってくれないのに。


 それから1時間ほど経ったか、ある程度の料理を作り終え、最後にスープを煮込めば完成という所まで勧められた。

「亜里沙さん。私、お風呂洗ってくるのでスープの鍋だけ見てて貰えますか?」

「おっけー! 任せて!」

 そして、私はエプロンを外してお風呂場へ向かった。いくら亜里沙でも、鍋が沸騰しないようにチェックするくらいは出来るだろう。


この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?