「葵。最近、亜里沙に何かあった?」
「うーん、特にはないと思うけど……ペットを亡くしたって話は私も聞いた」
「あー、うん……前に話した学校の子って亜里沙の事なんだよね。あの子、学校では元気そうにしているけど……本当はまだ立ち直れてないのかも」
以前、お姉ちゃんの学校でペットを亡くした子の話を聞かされた事を思い出す。私自身が引き起こした事だが、まさかその学校の子が亜里沙だったとは。
「うん、凄い大切な家族だったって言ってたから……相当なショックだったんだと思う」
『供物』を捧げる為に必要な事だったし、後悔はしていない。けれど、実際に悲しんでいる亜里沙の姿を見る事は……かなり辛いものがあった。
自分自身が、亜里沙を傷付けたという事実を突き付けられた気分だ。
「明日、私も学校で声かけてみるけど……葵も亜里沙から連絡とかあったら気に掛けてあげて欲しい」
「うん、分かってる。私も心配だもん」
「……私の知らない間に随分と仲良くなったんだね」
「別に……」
お姉ちゃんが悪戯っぽく微笑み、私の肩をつつく。
「もう分かってると思うけど、亜里沙は本当に良い子だから……大切にしてあげてね」
「……分かってる」
亜里沙は良い子、そんな事は私だって分かってる。そして、その亜里沙の心に深い傷を負わせたのは……紛れもなく私だ。