その日、亜里沙が帰った後……私はソファに座る項垂れていた。
聞きたくなかった。亜里沙が……そんな事をしてお金を稼いでいたなんて。
そうしていると、スマートフォンから着信の通知音が鳴り響く。画面を見てみると、発信元は先生だ。
『もしもし、葵さん』
「先生……」
『私に隠してる事がありますね?』
先生は怒っている訳ではなかったが、普段とは違いその言葉には圧があった。
「……とある人物に、仏壇の供物の中身を見られてしまいました。申し訳ございません」
『ええ、知っています。ここ最近仲良くしている松田 亜里沙さんですね』
先生には既に見破られていた。
先生の能力の前では、隠し事など意味をなさない。
「はい……先生、私はどうすれば」
『どうすれば? 1つしかないでしょう。除霊するのです。竹島の時のように』
先生は冷たい声で、とんでもない事を言い出す。
除霊? 亜里沙を?
「えっ……でも、亜里沙さんは悪霊じゃ……」
『いいえ。気付いていないのかもしれませんが、彼女は立派な悪霊です。もう聞いたのでしょう? 彼女がパパ活や援助交際の類に手を染めている事を』
「けど、それだけの事で悪霊だなんて……」
『彼女の罪はそれだけではありません。彼女はパパ活・援助交際の仲介・斡旋を行い、被害者を常に増やし続けている。そして、竹島のような顧客から仲介料としてマージンまで受け取っている。そして……茜さんも被害者のうちの1人なのです』
先生の言葉に、血の気が引く。
お姉ちゃんが、亜里沙の被害者?
その言葉の意味を、私はすぐに飲み込む事が出来なかった。