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第102話 先生

「もしもし」

『先生、準備が整いました。お願い出来ますか?』

「分かりました、では向かいます。抵抗などされませんでしたか?」

 私は車の中で通話をしていた。通話の相手は……雪代 葵だ。予定通り、松田 亜里沙を捕える事に成功したらしい。

『大丈夫です。ぐっすり眠ってます』

「それは良かった。では、後ほど」

 そして、私は手短に葵との通話を終わらせる。


「……また随分前に無茶言ってくれたもんです」

 すると、その内容を聞いていた運転席の男が、私に声を掛ける。

 ガラの悪いその男は、繋命会と繋がりを待つ反社会的勢力に属する現役の暴力団員だ。何か荒事や面倒事の際には、金を握らせ都合良く使わせてもらっている。

「無茶?」

「いくらウチのシマ内だからって、あんまり無茶は言わないでくださいよ。今回は動物園のオーナーがウチと関わりがあるから話が通りましたけど、後始末含め結構大変なんですから。殺すならいつも通りのやり方で良いじゃないですか。もしくは、そういうのはウチに一任するか」

「ごめんなさいね。けれど、今回は私ではなく彼女のアイデアなんです。彼女自身から申し出があったのだから、是非その積極的な姿勢を汲んで上げたいと思ってね」

「……へぇ、この前のあの子が。随分とエグい事を考えるんすね、最近の子は」

 助手席に座り、私は大きく溜息を吐いた。

 今夜の除霊は、長くなりそうだ。

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