「もしもし」
『先生、準備が整いました。お願い出来ますか?』
「分かりました、では向かいます。抵抗などされませんでしたか?」
私は車の中で通話をしていた。通話の相手は……雪代 葵だ。予定通り、松田 亜里沙を捕える事に成功したらしい。
『大丈夫です。ぐっすり眠ってます』
「それは良かった。では、後ほど」
そして、私は手短に葵との通話を終わらせる。
「……また随分前に無茶言ってくれたもんです」
すると、その内容を聞いていた運転席の男が、私に声を掛ける。
ガラの悪いその男は、繋命会と繋がりを待つ反社会的勢力に属する現役の暴力団員だ。何か荒事や面倒事の際には、金を握らせ都合良く使わせてもらっている。
「無茶?」
「いくらウチのシマ内だからって、あんまり無茶は言わないでくださいよ。今回は動物園のオーナーがウチと関わりがあるから話が通りましたけど、後始末含め結構大変なんですから。殺すならいつも通りのやり方で良いじゃないですか。もしくは、そういうのはウチに一任するか」
「ごめんなさいね。けれど、今回は私ではなく彼女のアイデアなんです。彼女自身から申し出があったのだから、是非その積極的な姿勢を汲んで上げたいと思ってね」
「……へぇ、この前のあの子が。随分とエグい事を考えるんすね、最近の子は」
助手席に座り、私は大きく溜息を吐いた。
今夜の除霊は、長くなりそうだ。