私は夜風の寒さに身を晒し、寒さで目を覚ます。
辺りは真っ暗で、すぐにはここがどこなのか理解が出来なかった。
ここは暗くて、とても寒い。
「……ん……何、ここ」
まだ目が慣れていなくて、私は暗闇の中を直感で進んでいく。
地面はどうやら獣道のような荒れた地形のようで、何度も転びそうになる。
「ねぇ、ねぇ! 誰か! 誰かいない!?」
助けを求め、私は必死に腕を前に突き出す。
すると、手の先が鉄製の何かにぶつかる。
これは壁? いや、違う……これは鉄格子だ。
私は今……牢屋か檻のような場所に閉じ込められている?
『やっと目覚めましたか? 亜里沙さん』
「葵ちゃん?」
すると、暗闇の向こうから聞き覚えのある声が聞こえてきた。それは間違いなく葵ちゃんの声だ。
「葵ちゃん、助けて! 目が覚めたらこんな所にいて……どうして、何で!?」
『どうして? だって……私が亜里沙さんをここまで運んできたんですよ? 覚えていませんか?』
「え? 何言ってんの……?」
そして、鉄格子の近くまで葵ちゃんが近寄ってくる。私はその手を、鉄格子越しに握って助けを求める。
こんな所にいきなり閉じ込められて、私は目の前の葵ちゃんに縋る事しか出来なかった。
『亜里沙さん……いや、もう悪霊ですか。ここからは除霊の時間です。苦しいとは思いますが……元・友達として、あなたを救ってみせます』
「は……?」
葵ちゃんの言っている事が全く理解出来ない。
悪霊? 除霊? 何の話をしているの?
全く、理解が出来ない。
『亜里沙さんの身体に棲みついた悪霊は、私が除霊してみせます』
そして、ようやく目が慣れてきて、暗闇の中にいる葵ちゃんの表情が読め取れるようになる。
その時、葵が浮かべていた表情は……酷く冷たく、恐ろしい形相だった。