私の匂いを嗅ぎつけ、虎達がもう目の前まで迫ってきていた。身体は大きく、鋭い歯の隙間からは既に涎が流れ出ている。
「お願い、来ないで……おとなしくして」
こんな猛獣に襲われればひとたまりもない。
人間なんて、単なる肉片と化す。
「何もしないから、だから、食べないで……」
私は必死に虎達へ命乞いをするが、そんな事が通じる訳がない。
虎達はジリジリと私の元へと近づいて来る。
「……あっ……」
その瞬間、1匹の虎がもの凄いスピードで私に飛び掛かり、太ももの辺りに勢い良く噛み付く。
太ももからは血が吹き出し、鮮血が地面を汚す。
「助けて……っ、助けて……」
太ももに激痛が走ったのも一瞬、次は腕、腹……次々と虎の歯と爪が突き刺さり、引き裂かれ、あっという間に着ていた制服のYシャツは真っ赤になる。
「た……す……けて……」
すると、他の虎達も私の身体に群がり、今度は虎同士で『食糧』の奪い合いを始める。
腕が千切れ、足が飛び……もう、痛みを感じる事すらも出来なくなっていた。
肉は裂け、骨が砕け….…肉体的な死が近付いてくる。
薄れていく意識の中、最後に私の目に映ったのは……私が喰い殺されていく姿を黙って凝視する、葵ちゃんの姿だった。