「ぅ……え……ええ……」
檻の中で、部屋住みの小僧がゲロを吐いていた。
どうやら生身の死体を見るのが初めてだったらしく、気分が悪くなったらしい。
「おい! いつまで吐いてんだよ! こっちの血溜まりもちゃんと落とせよ、朝までには終わらせなきゃならねぇんだから」
俺たちは繋命会に飼われているヤクザの末端だ。今の時代、何か大きな『スポンサー』がいなければヤクザも生き残ってはいけない。
繋命会は俺たちにとっての『太客』だった。
「だって、もう人の形してないっすよ……これ」
「むしろ中途半端に人の形が残ってる方がキツいぞ、こういう処理は」
檻の中に放り込まれた子は、当然ながら既に死んでいた。肉はズタズタにされ、骨だって噛み砕かれている。
俺も人が獣に捕食される場面は初めて見たが……あんな死に方はしたくないと心から思った。
「……あいつら、何者なんすか。妙な宗教の連中ですよね」
「さぁな、俺達は金を貰ってるからその分の仕事をする……それだけの関係性だからな。連中の目的なんぞ、全く分からねぇ」
ヤクザの俺たちから見ても、連中はイカれてる。
信仰の為に人を殺すだなんて……到底、理解は出来ない。
「しかも、今日いたあの女の子、中学生くらいですよね? あんな歳でこんなエグいやり方で人を殺すなんて……」
「まぁ、人が狂うのに歳は関係ねぇからな」
俺達は飛び立った血と肉片をブラシで洗い流し、証拠の隠滅に勤しんだ。