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第107話 清掃

「ぅ……え……ええ……」

 檻の中で、部屋住みの小僧がゲロを吐いていた。

 どうやら生身の死体を見るのが初めてだったらしく、気分が悪くなったらしい。

「おい! いつまで吐いてんだよ! こっちの血溜まりもちゃんと落とせよ、朝までには終わらせなきゃならねぇんだから」

 俺たちは繋命会に飼われているヤクザの末端だ。今の時代、何か大きな『スポンサー』がいなければヤクザも生き残ってはいけない。 

 繋命会は俺たちにとっての『太客』だった。

「だって、もう人の形してないっすよ……これ」

「むしろ中途半端に人の形が残ってる方がキツいぞ、こういう処理は」

 檻の中に放り込まれた子は、当然ながら既に死んでいた。肉はズタズタにされ、骨だって噛み砕かれている。

 俺も人が獣に捕食される場面は初めて見たが……あんな死に方はしたくないと心から思った。


「……あいつら、何者なんすか。妙な宗教の連中ですよね」

「さぁな、俺達は金を貰ってるからその分の仕事をする……それだけの関係性だからな。連中の目的なんぞ、全く分からねぇ」

 ヤクザの俺たちから見ても、連中はイカれてる。

 信仰の為に人を殺すだなんて……到底、理解は出来ない。


「しかも、今日いたあの女の子、中学生くらいですよね? あんな歳でこんなエグいやり方で人を殺すなんて……」

「まぁ、人が狂うのに歳は関係ねぇからな」

 俺達は飛び立った血と肉片をブラシで洗い流し、証拠の隠滅に勤しんだ。

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