それから数日間、私は何事もなかったかのように普段通りの日常を送っていた。
「おはよ~」
「もう、お姉ちゃんスマホ弄り過ぎ。早く顔洗ってきなよ」
「あ、うん……いや、亜里沙からいきなり返事が来なくなってさ。来週の待ち合わせの場所決めてる最中だったのに……」
お姉ちゃんの言葉に、この前の動物園での光景を思い出す。もう、亜里沙がこの世にいない事をお姉ちゃんは知らない。
「どうせ学校に行ったら会えるでしょ? その時に決めれば良いじゃん」
「いや、この3日くらい休みなの。周りの子に聞いても何でか分からないって」
「……そうなんだ」
お姉ちゃんに限らずだが、亜里沙の居場所など分かる訳がない。
既に亜里沙の死体は、あのチンピラ達が『抹消』しているだろう。つまり、永遠に亜里沙が見つかる事などない。
「ねぇ、葵からも連絡してあげてくれない? この間の事もあったし、何か心配で」
「うん、それは良いけど……」
「単なるズル休みなら良いんだけど」
亜里沙を失う事は、お姉ちゃんにとっては辛い事だろう。いや、私にとっても辛い出来事だった。
けれど、これは必要な事だった。
私は改めて自分にそう言い聞かせた。