「ごほっ……ごほ」
私は洗面台の前で、激しく咳き込む。
先程、気分が悪くなって何回か嘔吐して少し落ち着いたのだが、今度は咳が止まらない。
「……除霊の後は、やっぱりこうなっちゃうな」
私は正しい事をしたはずなのに、何故だろう。とても悲しいし、悪い事をした気分だ。
あれは必要な事で、亜里沙にとっても最善の最期だった……何度自分にそう言い聞かせても、私の心は晴れない。
「……まだ、人なのかな、私も」
けれど、こうして『痛み』を感じられている事に少し安心している自分もいた。
この痛みを感じる事が出来なくなったら、私はどうなってしまうのだろう。
それこそ、私こそが本物の『悪霊』だ。