目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

第111話 恐怖

 あれからしばらく眠ったけれど、体調は全く改善しなかった。頭が痛いし、気持ちも悪い。


「……気持ち悪い」

 体調を崩すなんていつ振りだろう。あんな大雨の中、傘もささずにいたのが不味かったか。

 あの時はそんな事を全く考えていていなかったけれど、大失敗だ。

 私がベッドで横になっているとらスマートフォンに着信が入る。画面を見ると、それは玲くんからの電話だった。


「もしもし」

『茜? 大丈夫なの? 今日休みって聞いたから』

「うーん、あんまり大丈夫じゃない……」

『亜里沙も茜もいないと、学校つまんないよ』

「……玲くんも、亜里沙の事は分からない?」

「ああ……この前まで連絡は取ってたけど、いきなりそれも途切れて……それ以降は何も」

『玲くん、私怖い……いきなり周りの人が2人もいなくなって……怖いよ』

 こんな事、玲くんに言っても仕方ないけれど……けれど、とにかく今は誰かに縋りたかった。この短期間で、2人の人間が消えた。跡形も無く。

『茜……』

「次は玲くんかもしれないし、私かもしれない……そう考えると、怖くて……」

『落ち着けって、偶然だよ。たまたまだって……』

「もし誰かが、私たちを狙ってやってたら」

『だから考え過ぎだって。茜、ちょっとナイーブになり過ぎだぞ』

「だって……」

『大丈夫だよ、茜に何かあったら……俺が守るから』

「ぇ……」

 その瞬間、心の中でも何かが湧き上がったような感覚がした。まさか玲くんにそんな事を言われるとは思っていなかったから、驚いたけれど……。

 何だか凄く心強くて、安心出来る。

『とりあえず早く治して学校来なよ、じゃあね』

「……うん」

 気のせいなのは分かっているけど、何だか少しだけ体調が良くなった気がした。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?