あれからしばらく眠ったけれど、体調は全く改善しなかった。頭が痛いし、気持ちも悪い。
「……気持ち悪い」
体調を崩すなんていつ振りだろう。あんな大雨の中、傘もささずにいたのが不味かったか。
あの時はそんな事を全く考えていていなかったけれど、大失敗だ。
私がベッドで横になっているとらスマートフォンに着信が入る。画面を見ると、それは玲くんからの電話だった。
「もしもし」
『茜? 大丈夫なの? 今日休みって聞いたから』
「うーん、あんまり大丈夫じゃない……」
『亜里沙も茜もいないと、学校つまんないよ』
「……玲くんも、亜里沙の事は分からない?」
「ああ……この前まで連絡は取ってたけど、いきなりそれも途切れて……それ以降は何も」
『玲くん、私怖い……いきなり周りの人が2人もいなくなって……怖いよ』
こんな事、玲くんに言っても仕方ないけれど……けれど、とにかく今は誰かに縋りたかった。この短期間で、2人の人間が消えた。跡形も無く。
『茜……』
「次は玲くんかもしれないし、私かもしれない……そう考えると、怖くて……」
『落ち着けって、偶然だよ。たまたまだって……』
「もし誰かが、私たちを狙ってやってたら」
『だから考え過ぎだって。茜、ちょっとナイーブになり過ぎだぞ』
「だって……」
『大丈夫だよ、茜に何かあったら……俺が守るから』
「ぇ……」
その瞬間、心の中でも何かが湧き上がったような感覚がした。まさか玲くんにそんな事を言われるとは思っていなかったから、驚いたけれど……。
何だか凄く心強くて、安心出来る。
『とりあえず早く治して学校来なよ、じゃあね』
「……うん」
気のせいなのは分かっているけど、何だか少しだけ体調が良くなった気がした。