そして、あたしは少し先にいた早川くんを追いかける。
食堂を出たところにいた早川くんを見つけ。
「早川くん!」
「え? 楠さん? どうしたんですか?」
声をかけたあたしに立ち止まって驚く早川くん。
「あのっ! ちょっと、話したいことあって……!」
あたしは早川くんの目を見て伝える。
「……軽くここでは言えない話ですか?」
「えっ、あっ、うん……」
すでに早川くんはあたしの言いたいことを察しているのか、自分からそんな風に言ってくれる。
「じゃあ、そっちの隅で話しましょうか」
そう言って、あまり人の来ない場所の隅の方に二人で移動する。
「話したいことってなんでしょう。まぁ、なんとなく言いたいことはわかりますけど……」
早川くんは落ち着いたまま、優しい雰囲気であたしに話しかける。
「あの……。この前、言ってたあたしの好きな人、なんですけど……」
「高宮さん、ですよね……?」
「あっ……はい……」
やっぱりわかってた。
「もしかして。二人付き合ってたりしますか……?」
「えっ! そこまで!?」
「ハハ。やっぱり」
あたしはそこまで気付かれてると思ってなくて、驚いて素の反応をしてしまう。
「ごめんなさい! 早川くんの気持ちに応えられなくて」
あたしは頭を下げて謝る。
「いえ! 謝らないでください。オレが楠さんの気持ちわかってて、それでも勝手に気持ち伝えただけなんで」
「早川くん……」
「よかったですね」
「あり……がとう……。あたしも、フラれたあとに、まさかこんなことになって信じられなくてビックリしてるというか……」
「オレはなんとなくわかってましたよ?」
「えっ!? わかってたって、何を!?」
「高宮さんが楠さん好きだってこと」
「いやいや、あたしホントに一度は思いっきりフラれてて。あたしじゃ無理だってハッキリ言われたから、ホントに諦めようと思ってたんだよ?」
「それもオレから見たら高宮さんが気付いてなかっただけかなぁって。楠さんの大切さを、失くしてから改めて気づいたってそんなとこだと思いますよ」
「なんで……、そんな風に思うの……?」
「あの居酒屋で初めて高宮さんに会った時。あれは好きな女性に対しての嫉妬と焦りでしたもん」
「えっ!? あの時!? まさか!」
「だからオレも焦って気持ち伝えたんです」
「えっ、それで?」
「はい。なんとなく二人は想い合ってるのかなぁってあの時すでに思ってましたけど、二人の会話や楠さんの話からすると、まだ二人は気持ち通じ合ってないんだなぁって思って。それなら、オレにもチャンスあるかなぁって。わかってたんですけどね。時間の問題で、きっと二人はくっつくだろうなぁとは思ってたんで」
「それなのに、早川くんは気持ちを伝えてくれたってこと……?」
「正直いうと、ホントはオレもすげぇ楠さん好きでした」
「え……」
「相手が高宮さんじゃないなら、マジで頑張ってオレに振り向いてもらおうって必死になってたと思います。だけど……。二人の絆は強くて、お互いに必要としているのに気付かないくらいもう二人の仲は当たり前の関係になってるんだなってわかったんで」
「早川くん……」
ハッキリとそれだけ好きだと言ってくれた早川くんはとても頼もしく見えて。
辛い気持ちを伝えながらもしっかり笑顔を返してくれる早川くんは、とても素敵だなと思った。
「ホントに、あたしも早川くんのこと素敵だなって思ったし、きっと早川くん好きになれたら幸せなんだと思います。だから、ホントにちゃんと早川くんと向き合いたいって思ってて……、思ってたんですけど……」
「はい……。わかってます。だから、キッパリとフッてください」
「早川くん……」
なんて強い人なんだろう。
いや、人はそこまで強くない。
好きだと思ってる人に、こんなに堂々とフラれることを自ら望む人なんていない。
だけど、早川くんは笑顔でそんな言葉をあたしにかけてくれて……。
きっと早川くんは、どこまでも優しい人なんだ。
ホントに早川くん好きになれたらよかったのに……。
早川くんのどこまでも大きい優しさが……痛い。
あたしは優しすぎる早川くんに泣きそうになるけど、ここで泣いたらあたしはずるすぎるから。
ちゃんと誠意を持って早川くんに気持ちを伝えなきゃ。