「あたしは……。やっぱり高宮さんが好きです。高宮さんじゃないとどうしてもダメなんです。だから、ごめんなさい……」
あたしは込み上げてくる涙をこらえて、深く頭を下げる。
「はい。わかりました」
「早川くんは、とても優しくて、ホントに素敵で……。ホントに、ホントに、早川くんに気持ちを伝えてもらって嬉しかったです。あたしを好きになってくれてありがとう」
あたしは頭を上げて、しっかり早川くんを見て気持ちを伝える。
「ハハッ。楠さん、最後にそんな言葉ずるいですよ。そんな未練残っちゃうフり方しないでくださいよ」
「あっ、ごめんなさい!」
「いや、でも嬉しいです。楠さんにそんな風に思ってもらえてただけでも十分です。楠さん好きになれてよかったです。こちらこそありがとう。ちゃんとフッてくれて」
あ~早川くんの気持ちに応えられないのが辛い……。
こんなに辛いことだなんて思わなかった。
だけど、理玖くんがいる限り、あたしはどうしようもないから……。
「あっ、でもこれから同期としては普通に接してくださいね。同期として楠さんとは仲良くしていたいんで」
「はい! もちろんです!」
「よかった。じゃあ、オレ、行きますね」
「ごめんね。引き止めて」
「いえいえ。それでは」
最後まで早川くんは爽やかに、そしてどこまでも気を遣ってくれる優しさを残して、その場を去っていった。
さすがにまだ気持ちを切り替えられなくて、その場でボーッとしていると。
「沙羅」
今度は理玖くんが顔出して声をかけてきた。
「理玖くん……」
「もう食べ終わってたから食器片づけて来たけど、よかった?」
「あっ、うん……」
あたしは俯きがちに返事をする。
理玖くんもここまで探しに来てくれたのかな……。
「ちゃんと言えた?」
「うん。ちゃんと言えた……」
「そっ……。よく頑張ったな」
理玖くんは優しく頭にポンッと手乗せてそう声をかけてくれる。
「早川くん、全部わかってた。理玖くんと付き合ってることも、あたしの気持ちも……。だけど、よかったねって言ってくれて、最後まで優しくて……」
「うん。それだけのヤツだから、ちゃんとお前も気持ち返してやらないといけなかった」
「うん……」
それでもまだ少し俯いてるあたしを、理玖くんがそっと隣から肩から抱き寄せ片側の頭をまたポンポンと撫でてくれる。
「もう気にすんな。早川には、ちゃんとオレが幸せにするって伝えたから安心しろ」
「えっ……?」
「さっきすれ違った時。早川にそう伝えたから」
「そっ……か……」
こんな時、理玖くんもちゃんと優しいんだな……。
早川くんのことで落ち込んでいても、やっぱりこんな風に接してくれる理玖くんに嬉しくなる。
「今度はオレの番」
「えっ? 理玖くんの番って?」
「オレも、茉白と颯人に、自分の口で目の前で、ちゃんとオレらのこと伝えたい」
「え……? いいの……?」
「いいのってなんだよ」
「茉白ちゃんにもう伝えても平気……?」
「そういうとこだよ」
「そういうとこって……?」
「お前がいつまでたってもそうやってオレの気持ち信じねえから。お前の不安がなくなるまで、ちゃんと伝えてってやるけど、お前もどんだけオレが好きかってこと、もうそろそろ自覚持て」
「はい……」
ホントは少しずつ自覚も自信も持て始めている。
だけど、やっぱりどこかで茉白ちゃんのことは気にかかってるのも確かで……。
だから、ちゃんと茉白ちゃんに伝えてくれるということは、それだけの覚悟もあるということだと思うから……。
あたしもなんの不安もなく理玖くんとちゃんと向き合いたい。
自分だけをホントに好きでいてくれてるのだと自信を持ちたい。
あたしと理玖くんは、きっと茉白ちゃんという存在を乗り越えてこそ、ようやく本物の関係になれるような、お互いちゃんと向き合えるような、そんな気がするから。