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第112話 分かち合う喜び①


 理玖くんに、ちゃんと報告すると言われてから、タイミング良く颯兄と茉白ちゃんが引っ越す日が近くなって、しばらくしてから4人でお見送り会らしきみたいな形で集まることになった。


 そしてその当日、理玖くんの家。


 初めて理玖くんは茉白ちゃんを自分の家に呼んだ。


 それと一緒に、理玖くんはあたしにまた料理を作ってほしいと頼んでくれた。


 正直茉白ちゃんを呼ぶことになるなら、茉白ちゃんに比べて料理の腕なんて全然だけど、でも今回は余計に頑張りたいって思った。


 理玖くんの彼女として、ちゃんと自信が持てるように。


 茉白ちゃんの変わりじゃなく、堂々と自分があたしが彼女だと思えるように。


 理玖くんにも茉白ちゃんの前でもちゃんとそう思ってもらえるように。


 あたしはまた新たなレシピを覚えてすごく頑張った。


 どんどん出来上がっていく料理を見て、理玖くんは――。



「どんどん料理の腕上げてくな。沙羅にここまで料理の才能があったとは」


「好きな人のためなら、なんだって出来るってことなんじゃない?」



 あたしは料理を作りながら理玖くんに答える。



「くー。お前可愛すぎかよ」



 理玖くんはそう言いながら、料理を作ってるあたしを後ろからギューッと抱き締めてくる。



「ちょっ! 危ないってー!」


「沙羅。顔見せて」



 後ろからそんなことを言ってくる理玖くん。



「やだよー。今料理作ってるもん。早くしないと二人もすぐ来ちゃう」


「えー、オレはそんな二人より今目の前の沙羅堪能する方が断然優先事項なんだけど」


「フッ。何それ」



 最近の理玖くんはこういう甘い言葉とスキンシップがとても多い。


 最初の頃はさすがにあたしも慣れなくて恥ずかしかったりしたけど、あまりのそのアピールの多さに自然とあたしも慣れて受け入れるようになってしまった。



「あっ、それウマそう。食いたい」


「ん? あとからもっと綺麗に並べてちゃんと出すよ?」


「今それ食いたいの」



 理玖くんは駄々をこねる子供のように”あー”と口を横から覗き込みながら口を開ける。



「え? ホントに食べるの?」


「ん」



 これはもしや世にいう”あーん”ですよね!?


 えっ、あの理玖くんが!? あたしに”あーん”をしている!?


 いや何このキュン度! 理玖くんの方が可愛すぎなんですけど!


 そして変わらず理玖くんは口を開けたまま可愛く待っている。


 あたしは目の前のその料理を手にして、このシチュエーションにドキドキしながら、理玖くんの口へと入れる。



「ん。ウマいっ」



 モグモグしながら可愛い笑顔で微笑む理玖くん。


 そんな理玖くんを見てまたキュンとなる。


 あたしは可愛い理玖くんを首を傾けてすぐ近くで見つめていると。


 理玖くんがフッと更に微笑んで。


 秒の速さで、チュッと唇を重ねた。



「ごちそーさん」



 そして満足そうにそうあたしに伝えてまた微笑む。



「もう……! 理玖くん!」


「フッ。油断してるお前が悪い」



 相変わらず意地悪な理玖くん。


 だけど今の理玖くんは甘くて優しい。


 その意地悪でさえも嬉しく思う。




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