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第74話 後書きは、ちょっと話を遡りします(8)

「何太后さま?」


 ソファーの上でお尻フリフリ、すらりと伸びた足をリズムよくバタバタと動かすほど御機嫌よく、ファッション雑誌を見て読んでいた何太后さまへと声をかけた。


「……ん? なんじゃ、貂蝉?」


 何太后さまは、ファッション雑誌を見て読む行為を辞めて、顔を上げ、向きを変え、首を傾げ、貂蝉へと言葉を返せば。


「何太后さまは、今日は早くから屋敷へといらっしゃいますが。理君の代わりに東京のゲーム会社へといかれなかったのですか?」


 貂蝉は何太后に対して僕の時のように不機嫌極まりない顔……。冷たい目で僕を見詰めつつ淡々と下知を告げてくる訳ではなく。


 阿保は「うっふん」と穏やかに微笑みつつゆるやかな口調で尋ねた。


 だから僕は掃除機をかけながら、その様子を見て「チッ!」と舌打ちをすれば。


《ジロリ!》


 と、貂蝉の阿保は睨むから、僕は慌てて余所見……。素知らぬ振り……。


 自分の唇を尖がらせて、「ピュ~♪ ピュ~♬」と口笛を吹きつつ誤魔化せば。


「はぁ~」と大きな溜息が貂蝉の口から漏れると。


「いや~、の~、貂蝉……。今日は朕は姉上さまも王允もいないし、陛下もいないから、東京のゲーム製作会社オリオンまではいかなかったのだ。あっ、はははははは……」


 何太后さまは貂蝉の問いかけに対して生前の癖……。お人形さま太后時代の何でも笑って誤魔化す癖を、自分の顔を引き攣らせつつ笑い誤魔化しながら告げた。




(済)

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