「何太后さま?」
ソファーの上でお尻フリフリ、すらりと伸びた足をリズムよくバタバタと動かすほど御機嫌よく、ファッション雑誌を見て読んでいた何太后さまへと声をかけた。
「……ん? なんじゃ、貂蝉?」
何太后さまは、ファッション雑誌を見て読む行為を辞めて、顔を上げ、向きを変え、首を傾げ、貂蝉へと言葉を返せば。
「何太后さまは、今日は早くから屋敷へといらっしゃいますが。理君の代わりに東京のゲーム会社へといかれなかったのですか?」
貂蝉は何太后に対して僕の時のように不機嫌極まりない顔……。冷たい目で僕を見詰めつつ淡々と下知を告げてくる訳ではなく。
阿保は「うっふん」と穏やかに微笑みつつゆるやかな口調で尋ねた。
だから僕は掃除機をかけながら、その様子を見て「チッ!」と舌打ちをすれば。
《ジロリ!》
と、貂蝉の阿保は睨むから、僕は慌てて余所見……。素知らぬ振り……。
自分の唇を尖がらせて、「ピュ~♪ ピュ~♬」と口笛を吹きつつ誤魔化せば。
「はぁ~」と大きな溜息が貂蝉の口から漏れると。
「いや~、の~、貂蝉……。今日は朕は姉上さまも王允もいないし、陛下もいないから、東京のゲーム製作会社オリオンまではいかなかったのだ。あっ、はははははは……」
何太后さまは貂蝉の問いかけに対して生前の癖……。お人形さま太后時代の何でも笑って誤魔化す癖を、自分の顔を引き攣らせつつ笑い誤魔化しながら告げた。
(済)