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もう俺の嫁が好きすぎて仕方がありません。ひたすらノロケさせて頂きます。~番外編~
よんただ
文芸・その他ノンジャンル
2024年10月29日
公開日
27,370文字
連載中
拙作の『もう俺の嫁が好きすぎて仕方がありません。ひたすらノロケさせて頂きます。』の番外編です。
連載に掲載できないようなオマケ要素のお話を、ここで掲載する場になります。
作者のぼやきや、当該作品の外伝などもここになります。


~恭介と陽葵のエープリルフール~

 今日は4月1日。

 お約束のエープリルフールである。 


 俺は三上恭介みかみきょうすけ。亡くなった父がやっていた町工場の跡を継いだ2代目だ。


 妻の陽葵ひまりは大学時代、学部の中で相当にモテた女の子だったが、ふとした事件がきっかけで偶然に互いが出会った事がきっかけで付き合って結婚に至った。


 うちは中学生になった13歳の恭治と、10歳違いで3歳の葵という二人の子供がいる。

 子どもたちは春休みで家にいるし、3歳の葵は親に甘えたい盛りだから目が離せない。


 俺の朝は子どもたちの休日となると早い。


 うちには柴犬がいて、毎朝、散歩をするのだが、平日は恭治が学校に行って、葵が保育園に行っている間に、陽葵が美容と健康も兼ねて、午前中のうちに柴犬の『きなこ』の散歩に行く。


 でも、土日や春休みや夏休みなどの休日になると、俺がきなこの散歩に行くことになっていた。


『もう朝の5時半か…』

 俺は急いで支度をして、きなこの散歩に出かける。


 うちのきなこは、散歩の距離が6~9kmなんてザラなぐらい歩く。散歩に行くと1時間以上かかるので、早々に行かないと朝の仕事に間に合わない。


 眠気をこらえながら、きなこを散歩しているときに、俺はロクでもないことを思いついてしまった。


『今日は4月1日か…。今日はエープリルフールだから、ちょっと陽葵を吃驚させてみようか。』

 今でも大好きでたまらない可愛すぎる妻に悪戯心が芽生えてしまった…。


 散歩から帰って家に戻ると、陽葵だけが起きていて朝食の準備をしていた。


「あなた、お帰り。まだ恭治も葵も寝ているのよ。恭治なんて春休みで気が抜けすぎているわ。宿題も出ないから夜までゲーム三昧なのよ。でも、あの子は学習塾に行ったけで自主学習もせずに学年の成績がトップクラスだから、文句も言えないのよ。ホントにどうしよう…。」


 俺はきなこを家の中に入れるとリードを外して、きなこにドッグフードを与えながら、陽葵が子供へ抱いている不満を聞いていた…。


「うーん、陽葵。恭治はやるべき事はやっているから文句も言えねぇよなぁ…。アイツは俺とは違って要領が良すぎてよく分からん…。そのうち舐めてかかるとバチが当たることを身をもって知るのか、それとも3年生に上がるタイミングぐらいで周りが必死に勉強を始めて焦り出すのか…。」


 恭治は思春期真っ盛りなので、微妙なお年頃だから、声をかける言葉やタイミングに注意をする必要があって親としては扱いに難しい時期になっている。


「そうよね、2年生の後半から気づかないようなら厳しく言ってみるわ…。あの子の事だから、そこまではサボっても、その成績を維持できると思うし…。」


 陽葵は眉をひそめながらも、思春期で微妙なお年頃の恭治を上手く操作する妥協案で落ち着いたようだ…。


 俺は仕事用の作業着に着替えて、陽葵が用意した朝食を一緒に食べると、今日のエープリルフールで陽葵を騙すネタを切り出した。


「そっ、そういえば…、陽葵さぁ…。」

 俺は自分が動揺したように言葉を装った。


 陽葵は俺の動揺した言葉を聞いて不思議そうに首をかしげている。

「ん?。あなた…。どうしたの?。」


「すっ、すこし…言いずらいのだけど…。陽葵が着替えている時にさ、左の肩甲骨のくぼんだところに小さいほくろがあって、そこに少し長い毛が一本だけ生えてるのを見て…。」


 これはエープリルフールの嘘だ。


 陽葵は若いときから体が少し硬い体質だ。俺は、陽葵が気になるようなことを言って、美容と健康の為に、彼女の体を柔らかくするように仕向けた悪戯を考えた。


 陽葵は俺の言葉に朝から動揺した。

「え゛ぇぇ~~~!。あなた、それは早く言ってよぉ~~!!。」


 彼女は少し顔を膨らませつつも、少し恥ずかしいようで頬がほんのり赤く染まっている。

『そういう陽葵がすごく可愛い。今日も可愛い陽葵成分を補充できて良かった。』


 そんな謎成分の補充はおいといて、俺は陽葵に苦笑いをしながら答えた。


「陽葵。その毛を取ってやりたいけどさ、もう仕事になるから、今日の夜にやってあげるから、そこまでは待ってくれ…。陽葵は体が硬くて、どうなってるか見られないだろうし…。」


「うぐぅ…。すごく気になるわ…。」

 しかめっ面になって、それが気になっている可愛い陽葵を置いといて、俺は家のそばにある仕事場に向かった。


 一方の陽葵は、愛する旦那から微妙なところに微妙な毛が生えていることを言われて、とても気になっていた。


『どうやって調べようかしら…。今は葵も恭治も寝ているから見るなら今のうちだわ…。』


 陽葵は脱衣所で服を脱ぐと、風呂場の中にある鏡を使って、その毛が見えるか試してみたが、体が硬くて振り向けずに全く駄目だった。


 それでも、なんとか背中を見ようと思って、彼女が無理に体をひねった時だった。


 ゴキッ!


 陽葵の硬い体から悲鳴とも言える音が聞こえた。

『まっ、まずいわっ…。無理にひねると、わたしの体が駄目になるわ…。』


 彼女は急いで服を着ると、ダイニングに戻って起きてこない息子を叩き起こして食事をさせながら考えた。


『体を柔らかくしないと、恭介さんが言っていた場所に生えている毛が見えないわ。なんとか仕事から帰ってくる前に、どうなっているか自分の目で確かめたいわ。』


 陽葵は、これが愛する旦那のエープリルフールの悪戯だとは夢にも思っていない。


 今度は寝ていた葵が起きてきたが、寝起きが悪くて癇癪かんしゃくを起こして泣いている。

 春休み主婦は忙しい。まして幼児がいると尚更だ…。


 葵が朝食を終えて、食器を片付けて食洗機を回して、洗濯物を干して片付けると、ようやく少しゆっくりできる時間になる。


『会社の事務の仕事は昨日の月末で振込なども終えているし、今は仕事も少なくて暇だから今日は家にいても大丈夫な筈だわ。絶対にその毛を確認するまでは諦めないわっ!』


 葵は一人でおもちゃで遊んでいるし、恭治も部屋に戻って友達とオンラインゲームを始めている。

 陽葵はまず、自分の体を柔らかくするために、美容のために買ったヨガのゲームソフトを立ち上げた。


「こうなったら簡単なポーズから徐々に難しいポーズに挑戦して、少し体を柔らかくしたところで絶対にみてやるわ!!」


 この時点で、愛する旦那が妻の健康を心配するあまりに考えた悪戯は大成功をしていた。彼女はいちど、思い込んでしまうと周りが見えずに執心してしまう悪い癖があるのが玉にきずであった。


 彼女はヨガのゲームソフトに集中していて1時間以上経過した時だった。ふと時計を見ると、もう11時58分だった。


 恭介が午前中の仕事を終えて家に戻ってご飯を食べにくるし、今は春休みなので、恭治もしばらくしたら部屋からここに来るだろう…。


 「しまった!!、ヨガに集中していてお昼を作るのを忘れたわ!!!」


 彼女が慌てて、奇妙な姿勢から普通の体勢に戻そうとすると、足がつってしまったのだ。


「痛い!!!」

 彼女は、足がつったので、その場から動けなくなってしまった…。


 一方、俺は、午前中の仕事を終えて昼ご飯を食べに家に入ると、リビングで横になって顔をしかめている陽葵を見つけた。


 「陽葵!!!どうした!!」

 俺は心配になって陽葵に駆け寄った。


「あっ、あなた。ヨガのソフトをやっていたら、足がつっちゃって…。いっ、痛い…。」


 俺は、陽葵のつった足をゆっくりと延ばして、しばらく様子を見る。

「あなた…ありがとう。死ぬかと思ったぐらい痛かったわ…。」


『しまった、エープリルフールの悪戯がすぎた…。』

 この状況を察した俺は今朝のネタばらしをすることにした。


「陽葵…すまぬ。今日はエープリルフールだから、朝の毛の話は、陽葵の体が硬いことを心配しての嘘だった…」


 そういうと陽葵は顔を膨らませて俺のほうを見た。

 そのときだった。


 ゴツンっ!!


 陽葵が体を起こそうとしたとき、俺の頭と陽葵の頭がぶつかった。


「痛い!!」

 夫婦は同時に同じ言葉を発した。


 しばらくして俺と陽葵は、笑いが止まらなくなった…。



 -その夜-


「もう、そんな悪戯なんて、ほどほどにしてよね…。」

 陽葵は今朝のエープリルフールの件で、俺の顔を見る度に顔を膨らませて怒っている。


「だって、陽葵の体が硬いから、何とか意識を植え付けたかったんだよ…」

 俺は怒ってる陽葵の頭をなでながら今日のエープリルフールの弁解をする。


「…あなた。その意識をわたしに植え付けたことには大成功したわ…。もう、あなたは昔から、こういう作戦を立てるのが上手すぎるのよ。ふふっ、来年は絶対にあなたに仕返しをするわ。」


「ひっ、陽葵。悪かったよ、来年からはしないからさぁ…」

 怒ってる陽葵は可愛いが、やっぱりちょっと怖いので、俺は素直に謝った。


「もぉ…。それでも、わたしの体が硬いことを心配してくれたことは嬉しかったわ。悪戯だけは余計だったけどね…。」


 そういうと、陽葵はニコッと笑って、不意に俺にキスをした。

『やっぱり陽葵は可愛い…』


 こうやってお互いが好きすぎる夫婦の1日は終わりを迎えた。

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