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第3話 二人の子供

 鎧を着た少年とローブを着た少年が森の中を進んでいる。


「待ってよ‼やっぱり辞めようよ。大人たちもオークはまだ早いって言ってたじゃん。」


「うるさい、いいから来るんだよ!!俺たちがオークをあっさり倒して大人たちを見返してやるんだ!!」


ーーーーーーーーーー


 一年後自分は人間族の言葉もある程度喋れるようになり、いよいよスライム族の村を出て人間族の村に住みその知識をいただくことにした。


「ソレジャ、イッテキマス。」


 自分は人間族の挨拶の練習をしつつ仲間たちに別れを言った。向かう村は自分がずっと観察していた村、『ヒューマの村』だ。


 潜入の仕方は体を人間族の体に化けようと思う。元より体の形を変化させることは可能だったので問題はなかった。

 なのでこの一年自分は人間族の大人の大きさに変化できるまでマナを食べて体を大きくすることと体の色を変えることに専念した。体の色を変化する術については少し悩んだがスライムたちを集めているとき噂で聞いた、火山にいるスライムは赤色やオレンジ色、沼地にいるスライムは黄色というのが手掛かりになると思い少し危険で遠いが火山や沼地のスライムを集め色の違いについて1つの仮説を立てた。


 スライムの主な栄養素は空気中に漂うマナなのだが、自分は森の中でもマナの多い水辺を住処にしていた。そこには水のマナが多く存在し、それを食べていた自分の体の色は青色だった。森の中でも風のマナの多い高い木の上を住処にしていたスライム達の色は緑色だった、当然火山には火のマナが沼地には土のマナが多く存在した。このことからスライムの体の色は食べたマナによって変わるのでは?と考え自分は様々なところで複数の種類のマナを食べていった。


 結果として普段の色はあまり変わらなかったのだが体の端の色が変わっていることに気づき、自分は体をねじってみたり力んでみたり、どうにかマナの量を体の場所によって変化できるのかと考えた。

 結論を言うとその通りだった。ただ人間の前で変に色を変えないように注意しなければ。


「うわぁぁぁ!!」


 自分が今までのことを振り返っていると突然悲鳴が聞こえた。自分が声のした方へ急ぐとオーク族に襲われている人間族の子供がいた。


「ねぇ、今から走れば逃げれるんじゃない!」


「うるさい!!戦士は敵を前に逃げたりしないんだ!!」


「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!!」


 もめている二人に向かってオークが棍棒を振りかざそうとする。自分は子供たちの前に走っていった。急いでいたので体の形や色は最低限しか意識していないが人間族の体に変身し子供たちを覆うようにして棍棒から守った。

 オークの棍棒が自分の人間族で言うところの頭の部分に当たる。

 しかし、あまりにも柔らかい体のスライムに打撃は効かない。

 自分は子供たちに分からないように棍棒に体を巻き付けて動けないようにした。


「ダイジョウブ?ケガハナイ?」


 子供達は不安そうな目で自分を見る。


「お姉さんは?」


 子供がなにか言ってる間にオークは吠えだし力任せに棍棒を引き上げようとする。さすがにオークの力には抗えず自分は棍棒を離してしまった。

 棍棒は勢いよくオークの頭に飛んでいき、オークは倒れた。

 今だ!!

 自分は2人を抱えてその場から逃げ出した。人に化けて走るのは慣れてなかったが逃げるタイミングを見極める事とこの森で目立ちにくい逃走ルートを見つけるのは劣っていない。

 ここまで来れば大丈夫かな?と思い子供たちを下ろした。


「お姉さんありがとうございます。」


 眼鏡をかけた子供が自分に向かってお辞儀する、もう一方の戦士?の格好をした子供は自分に向かって背を向けていた。


「ふん!あんなの俺が簡単に倒してたってのに邪魔しやがって。」


「こら!ちゃんとお姉さんに礼を言いなさい!」


 自分は喧嘩している2人の頭に手を置いて撫でた。子供達は嬉しそうにしていた。やはりこの姿で良かった。

 人間族の村を見ていて子供は人間族の雌に頭を撫でられると安心するらしいと学んでいた。

 自分は子供達に安心してもらいたくて雌の姿に変化していた。自分はオークと戦う気なんて無かったし勇ましさより子供が安心する方を選んだ。


「ところでお姉さん名前は?」


 さっきからの『お姉さん』は自分のことを言っていたのか。自分はモルガナさんに付けてもらった名前を言う。


「コレノナマエ、リチュ。」


 自分の指で自分の顔を指す。人間族は物を教える時そうしていたからだ。

 しかし、自分の思っていた反応と違い子供達は笑っていた。


「ははははは、何この姉ちゃん言葉使い可笑しい。」


「も、もしかして森の遠くから来て言葉がここと違ったりするのかな。」


 自分は訳が分からず黙っていた。


「リチュお姉さんどこかに行くところだったの?」


「チカクノムラニヨウガアッテイクトコロ。」


「ここの近くじゃ僕たちの村だ!やっぱり遠くから何かあってきたんだ。助けてくれた礼もあるし僕たちが案内するよ!」


「アリガトウ。」


 やった、ラッk…とラッキーはオークに襲われたこの子達のことを考えたら思っちゃいけない!でも子供達に紹介してもらえれば絶対に怪しまれずに村にいることが出来る。


「それじゃあ、僕たちの村に、ゴー!」

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