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第26話 初めてのラブホ

【水族館の外】

水浸しになってしまい、水族館見学どころではなくなった亜沙美と太一は外に出た


「うへぇ…ベタベタするぅ。服が張り付いて気持ち悪いよォ…それに、恥ずかしいしぃ…」


買ったバスタオルで一生懸命に拭いたのだが…イルカの水飛沫を大量に被ったので、そうそう簡単に乾ききるハズもなかったし乾かしたい


「周りの人からジロジロ見られてるしな…どこかで服、買ってやろうか?」


太一もある程度、水飛沫を浴びていたが…おそらくピンクイルカは目が合った亜沙美を目掛けて水飛沫を飛ばしたのだろう。太一の方は言うほど大した事はなかった


「ここでも、こんなに人から見られてるんだよ?商店街とか行ったら晒し者になっちゃうじゃん!そんなの嫌だよぉ…」



桜も終わった4月末、今日は例年よりも温度が高かったので薄めの生地の服を着てきたのが仇になってしまった。濡れ透けの姿の亜沙美は、かなり周囲の注目を集めていた


「じゃ、じゃあ…どうするよ?」


周りの男たちに亜沙美の濡れ透け姿を見られるのは我慢ならない太一だが、その彼も亜沙美のエッチぃ姿に直視出来ないでいた。すると…


「ねぇ…アソコのホテルに入ろ…」


太一の服の袖をツマミ、小声で提案する亜沙美。彼女の指さす方向を眺めると…ホテル【勉強部屋】と書かれた建物があった


「名前からしてビジネスホテルみたいだな…よし、そこで服を乾かすか」




【勉強部屋】

「すみません。休憩したいんですが?」


小さなカウンターに座るオバサンにリクエストする太一。そのオバサンは2人をジロジロ眺めてきた。足元から顔まで舐めるように見てきた


「まさかとは思うけど…アンタたち、未成年じゃないわよね?」


「えっ!?そうで…」

「も、もちろん違いますよぉ!ソコの水族館のイルカSHOWで彼女が水ぶっ掛けられちゃって〜(汗)」


純粋な亜沙美が馬鹿正直に「高校生ですけど何ですか?」とか言いそうな気配だったのと、オバサンの言い方に何かを予感した太一が、咄嗟に未成年ではないと嘘をついた


「まぁ良いさね。本来なら免許証か健康保険証を見せてもらうところなんだけどね…最近の流行病(ハヤリヤマイ)のせいで客も少ないから…面倒な手間はウッカリ忘れちまうよ…あぁ仕方ないね…やだやだ…」


オバサンは本当は答えを知っていて立場上、敢えて見逃してあげる。という事を遠回しに言っている気がした太一。亜沙美はその理由は分からなかったが…取り敢えず部屋の鍵を貸してもらえた


「料金表は入ってスグの壁に貼ってあるし、乾燥機もあるからね。替えの服も色々あるから、ゆっくりして行きな」


「??ありがとう、ございます?」


「ねぇ太一。替えの服が色々ある。ってどういう事なんだろうねぇ?」


「さあ?部屋着の事じゃないか?」


ここがビジネスホテルだと思っている2人は、答えが分からないまま鍵対応の部屋へ向かった




【302号室】

「なぁ亜沙美。あのオバサンの言い方、何だか変じゃなかったか?」


取り敢えず部屋に入った2人


「未成年に貸すのはイケナイ。って条例でもあったかな?…うわぁ!大きいベッド!」


部屋の中央には大人が3人でも余裕で寝られそうな、丸型の大きなベッドがその存在感をアピールしていた


「うわぁ!クローゼットの中も服が沢山入ってる!色とりどりな服が……んっ?…ね、ねぇ太一…」


「なんだ、どうかしたのか?」


クローゼットの中の服を見ていた亜沙美が何かに気が付き、動きが固まっていた


「も、もしかしてココってラブホ?」

「( ゜∀゜)・∵ブハッ!!なに〜!」


突然の予想外な言葉に思わず吹き出した太一


「何言ってんだよ!【勉強部屋】って名前のホテルなんだぞ。ラブホな訳が…何を見つけたんだよ!?」


固まっている亜沙美の背後から、一緒にクローゼットの中を覗き込んだ太一

その中にある服装と言うのは…バニーガール、女王様セット、シースルーな下着、中央に穴の開いたパンツなど、いかにも普通は着ないような服ばかりが並んでいた


「…ラブホだったんだ…だから受け付けのオバサンも、あんな聞き方してきたんだ。どうしよう太一?」


【勉強部屋】という名前から、ラブホテルの可能性を1mmも感じなかった2人だが、どうやらココはラブホテルのようだ


高校1年生ながら勘違いとは言え、ラブホテルに入ってしまった2人は無言で向き合ったまま立ち尽くしていた




続く

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