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第35話 梨香と太一と飴

【昼休み】

久しぶりの登校だった亜沙美。弁当は持ち込み制の学校なので、冷蔵庫にあった物を適当に詰め込んできた弁当を食べ終わった亜沙美。上着のポケットからある物を取り出し口の中に入れた


「えっと竹取さん。今、口に入れたのは何?」


向かい合って座っている梨香から、何?と聞かれた亜沙美は口の中の物を出して見せた


「えっと…のど飴です。私、最近のどの調子に気を使ってて…食後とかに舐める様にしてるんです…」


亜沙美は毎夜、1時間限定とは言え毎日配信でしゃべり続けているので喉のケアは必須級なのだが…そう聞かされた梨香は少し怪訝な表情になった


「分かっているとは思いますけど…授業中に食べたりしないで下さいよ?周りの皆さんへの悪影響にもなりますし、委員長の私が怒られてしまいますから、ね?」


梨香はクラス委員長に選ばれた時も何ひとつ文句も言わず、毎日コツコツと業務をこなすような真面目な性格をしている。その為、一応亜沙美にも注意したようだ


「そうですね…はい。食べないように努力します…」


亜沙美は決して梨香の注意を軽んじた訳ではないのだが…人見知りな彼女は的確な返答をする事に慣れていないので、そんな言い方になってしまったのだが…


「あのですね竹取さん!学校は遊び場ではないんですのよ。ましてや貴女の家でもないんです!【努力します】…じゃなくて【しません】と言ってくださいまし…」


「えっと…その…あの…」


亜沙美は決して従わない。という意思表示では無かったのだが…人見知りなので、スパッと返事する事が出来なかった。だが、その行動が良家で育った真面目な梨香のカンに触ったようだ…


「貴女ね!私はそんな難しい事を言っていないですよね?【しない】と何故言えないんですの?」


「Σ(゜ロ゜;)うひゃっ!?」


さきほど優しくフォローしてくれた梨香から、強めに言われてしまいキョドってしまう亜沙美。その時、教室のドアが勢いよく開いた


「すまない梨香!亜沙美は人と話すのが下手なんだ。悪気はないハズだから勘弁してやってくれ!」


隣のクラスの太一が勢いよく入ってきた


「あら太一君。どうしたの?」


梨香からすれば隣のクラスの太一の乱入が、どういう事なのか理解出来ていない。昼休みもあまり時間が残って無かったので、手短に説明する太一


「ヒソヒソ…」

「ガヤガヤ…」

「何で隣のクラスの浅宮くんが?」

「浅宮くんって立華さんの幼なじみじゃなかった?」


どうやら太一と梨香は以前からの知り合いの様な雰囲気だが、クラスメイトは亜沙美を巡って隣のクラスの太一と委員長の梨香が話し合ってる事に注目が集まった


「知ってる。ご近所さんなんだって…」

「でもわざわざ仲介に入るって、タダのご近所さんでする?」

「……もしかしたら竹取さんと浅宮君は付き合ってるとか?」

「不登校な竹取さんの世話を焼いてる内に、恋人になったとか?」

「(*/ω\*)キャー!!マジぃ!?」


「えっ!?あの…それは…」


太一がフォローしてくれる。その約束に安心を覚えていた亜沙美だったが…実際に別のクラスに来てまで世話を焼いてるところを見られたら、こういう事態になってしまう事までは予想していなかった



「静かにしてくださいっっ!!!」


「……………………………………………」

「……………………………………………」

「……………………………………………」

「……………………………………………」


普段は上品で声を荒らげるイメージが全くない梨香からの大きな声に、3人の様子を見て騒いでいたクラスがイッキに静まり返った


「キンコンカンコーン♪」

昼休み終了を告げる音が鳴った


「もう時間か……亜沙美!放課後に来るからな!」


そう言い残し太一は自分のクラスに戻って行ったのだが……

「ざわざわざわ…」

「ちょっと、マジっぽくね?」

「アレっもうっ出来てんじゃん!」

「不登校なのにリア充かよ!」


太一の行動が結局、亜沙美の事での最大の話題になってしまった。5時間目と6時間目の授業中、亜沙美はクラス中からの視線を全身に浴びることになった

((ノω・、)ウゥ・・・早く帰りたいよ…)


予想以上の事態になってしまい、学校に居ることに苦痛を覚えることになってしまった亜沙美。明日以降もちゃんと登校できるのか?




続く

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