目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第34話 クラス委員長 立華 梨香

【生徒相談室】

亜沙美の通う高校は20年以上前に建てられた学校で、当時は在籍生徒数が今よりも多かった為、今となっては使わない教室も多いので文化部に積極的に提供したり【相談室 兼 指導室】としての部屋も作られていた

その教室に担任の先生に連れてこられた亜沙美。担任はホームルームの短い時間で話し合いをする事にした


「時間があまりないから単刀直入に聞くが…竹取。お前イジメ等を受けて不登校になったのか?それとも別で悩みとかがあるのか?」


担任の男の体育教師は割と熱血漢なタイプの様で、亜沙美の不登校の理由がもしかしたら?と、心配してくれていたようだ


「い、いえ…そういう事は無かったです。個人的な理由で…長く休んで…すみませんでした…」


担任教師は決して怒鳴ったり高圧的な行動をしているつもりはないのだが、体育教師だけに声がおおきめでボソボソ喋る亜沙美にはプレッシャーになっていた


「別の理由……去年お父さんが亡くなった事なのか?」


「はい…それから母さんは父さんの仕事を継いだので…父さんの様に年中留守になったので…ひとりで暮らしているうちに…その…」


「そういう事だったか……分かった。けどな、今は多様化の時代になったとは言えだ。高校卒業した。という学歴が有るのと無いのじゃ、就職に大きな差があるのも事実だ。強要はしないが…なるだけ学校に来てくれ…話は以上だ。クラスに戻ってくれ…良いか、何か困ったら遠慮なく頼れよ。頼むな」


「は、はい。分かりました。有難うございます!…」


担任教師は途中から亜沙美が引き腰になっている事に気が付いたので、声のボリュームを下げ優しい口調で話すことを心掛けていた




【昼休み】

午前中の4教科が終わり昼休みになった。授業の合間の休み時間中は、数人のクラスメイトが珍しく居る亜沙美を囲って話し掛けていた


「亜沙美さん。一緒に弁当食べない?」

「1人食べても美味しくないよね〜」


「い、良いです…よ…一緒します…」


相変わらず亜沙美は、家族と太一以外の人間とは普通に会話できないようだ。流されながら相槌を打っているだけだった


「ねぇ。何で休んでたの?」

「毎日、遊べて羨ま〜」

「親に怒られへんの?」

「そんだけ休んでたら暇じゃね?」

「社会人の彼氏が出来たとか?」


長い時間の昼休みは、亜沙美も予想していたとはいえ質問攻めにあい続けていたので、早く放課後にならないかと思っていた


「ねー聞いてる?」

「無視しないでよ〜」

「何とか言ってよ〜」


「あ、うん。あの…そのね…」


亜沙美の緊張は極限状態にまで達していた。何か強いキッカケがあったら、クラスを飛び出して帰宅してもおかしくない所まできていた。そこへ…


「ちょっと貴女達!何をしてますの?」


「立華さん!?」

「委員長?」

「その、これは…」


針のむしろ状態だった亜沙美に、クラス委員長が話しに割り込んできた


「貴女達ね!久しぶりに登校した竹取さんを、囲んでそんなに質問攻めにしたら何も言えなくなってしまうでしょ!」


「そ、そうですね。すみません!」

「私たちは食べ終わったので…」

「失礼しましたー」


委員長に指摘された亜沙美を囲んでいた4人のクラスメイトの女子は、蜘蛛の子を散らすよう離れて行った


「竹取さん。あの子らも悪気があってした訳じゃないと思うのよ。許してあげてね…私、クラス委員長の立華梨香(タチハナリカ)よ。覚えてくれてる?」


「あっ、はい。覚えています…私が筆記用具を忘れた時に…ペンを貸してくれた人…ですよね?」


「あら!?そんな事、覚えてくれてたのね。一緒に弁当食べて良いですか?」


「は、はい。どうぞ…」


クラス委員長の立華梨香が、今にも学校から逃げ出しそうになっていた亜沙美を助けてくれた。先程まで亜沙美を囲んでいたクラスメイトとは違い、梨香は静かに柔らかい笑みを浮かべて寄り添うように一緒に昼ごはんを食べてくれた




続く

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?