【コンサート・プリンセス事務所】
「…という訳で、彼は首にしました。代わりに、今後は私がこの会社の社長を兼任してライバーを続けて行きますねっ!!」
「そして、アミちゃんのお母さんに会計と営業をしてもらうのね?私(スノウ)は、このままで良いのかしら?」
事務所内では、社長席に座っているオリビアを中心に、今後の展開をスノウと亜沙美の母親の3人で話し合っていた
「スノウには、所属ライバーとの交流部長を務めてもらおうと思っているの。活動していく中で、困っている事や相談事などを聞いて欲しいの。メルルの失敗を繰り返す訳にはイカないからね!」
「なるほど…会社の長と、ライバーの長、経営の長の三本柱で会社を再スタートさせる。そういう訳ですね」
オリビアとスノウは、浅宮アミの母親があまりにも頭の回転が早く、理解力も高いことに驚いていた
「お母さんを目の前にして言い難いのですけど…メルルはアミちゃんと同じく、1人で活動してもらうには色々不安がある訳だけど…アミちゃんにはロミーが居るから安心よね?でもメルルには…」
「大丈夫よ。シッカリ者のライバーにメルルの面倒をお願いしておいたわ。アミちゃんに対してのロミーほどは期待出来ないでしょうけど、彼女は面倒見良いからメルルも凄く助かるハズだわ♪」
【世間の声】
✱「メルル妊娠してたんか…」
✱「抱かれたのか?俺以外の男に…」
✱「元社長か…」
✱「純粋なメルルを騙すとか許せんな」
✱「急にセンシティブ発言しだしたのは社長の影響だったのか」
✱「子持ちライバーになっても応援するぜ」
「うぅぅぅぅ…僕が考えが足りなかったから、みんなを心配させちゃったのに…みんなはこんな僕に、こんなにも優しくしてくれるんだね…本当に有難うございます!」
突然の契約解除から…実は男性経験の無かった初心な彼女が、社長からのギブアンドテイクで身体を許してしまった事を知ったメルルの視聴者(メルラー)たちは、意外な程に彼女を擁護する声で溢れていた
もちろん「身体で視聴者数を買った売女(バイタ)だ!」というキツイ声も有るには有ったが…オリビアが開いた記者会見の場で、涙を流し謝罪するメルルの姿に…
✱「メルル顔出ししてる」
✱「オリビアさんもだ…」
✱「ブイチューバーが顔出ししてまでの謝罪か」
✱「それだけ反省してるんやろ」
✱「もう許して良いんじゃねーか」
オリビアもメルルも顔出しまでしての謝罪会見を行った。もちろん、真正面からの撮影はしなかったし、無人での会見ではあったが…ブイチューバー事務所社長とライバーが揃っての顔出し謝罪は異例であり、その反省の深さは視聴者たちに深く届いたようだ
【メルルのマンション】
「ガチャ…はぁ疲れたな〜。でも僕の為に一緒に顔出し謝罪に付き合ってくれたオリビアさ…オリビア社長には感謝しないと…ね〜!?」
「お疲れ様です蒼空先輩!…あ、夜空先輩に改名したんでしたよね?」
メルルが鍵を開けて自分のマンションの入り口に入ると、かなりの量のダンボールと1番の若い後輩である【火影すもら】が彼女(メルル)を出迎えた
「ど、どうして「すもら」が僕の家に?」
「あれ?オリビア社長から聞いてませんか?…まぁ良いでしょう!メンタルの弱いメルル先輩を、公私共にサポートしてあげて欲しいと言われました♪」
「そ、そうなの?凄く助かるけど…忙しいだろうに僕の面倒を見てもらって良いの?」
「メルル支援活動費は、会社から別口で手当として支給されますので、先輩は全然気にしなくて大丈夫ですよ♪」
「あはは、そうなんだ。オリビア社長キッチリしてるな〜…ともかく、よろしくね?」
「私は、アミ先輩へのロミー先輩のように甘くはないですからね。先輩の為にワザワザ静岡から引っ越して来たんですから、覚悟してくださいよ〜(笑)」
「ひ、ひい〜!お手柔らかに〜」
オリビアは、1番の新人ではあるのだが、若いうちからプロ意識を持って活動していた【火影すもら】に、メンタルの弱いメルルの面倒を頼んだようだ
王道を目指す火影には、ロミータのように同居人に対してエッチぃ行為をするような考えなど微塵も無かった
【高校卒業式】
それから約2年が経過し、亜沙美とロミータが高校を卒業する時がきた
「ロミータちゃん。満開の卒業式で良かったねぇ♪」
「そうね…桜が亜沙美をより綺麗に魅せているわね。可愛いわよ亜沙美❤︎」
隙あらば何時でも亜沙美を褒めちぎったり、エッチぃ悪戯を頻繁にしているロミータなので普段なら、公共の場で彼女と向かい合っても平然としているのだが…今日は無理なようだ
「ねぇ、ロミータちゃん。凄く大切な話があるの…聞いてもらえるかなぁ?」
「も、もちろんよ。改まって何なのよ?(ドキドキドキドキ)」
平静を装って亜沙美と会話を続けるロミータだが…舞い降りる桜の花びらをバックに、頬を赤く染めて真っ直ぐ見詰めてくる亜沙美の瞳に心を奪われているロミータ
「私ね…服部先輩に告白されちゃったのぉ…」
「えっ!?…Σ(*oωo艸;)エェ!?」
ロミータは、亜沙美の横に居られる存在が自分以外には有り得ない!と自信を持って高校生活を過ごしていた
既にサラリーマン並の収入を得ているロミータは、アルバイト並の稼ぎでしかない亜沙美を資金的に強く支えていた
それだけではない!配信者としてのバックアップもソツなくこなしていた。つまり【浅宮アミ】の配信活動にはロミータの存在は必要不可欠になっているのだ
「は、服部先輩から?………す、凄いじゃない……それで返事はどうしたのよ?」
亜沙美と仲の良かった異性と言えば…太一と服部先輩しか居ない。今更他の男が割り込む余地など有り得ないだろう
しかも太一は、お互いの両親公認で梨香と結婚を大前提に付き合っている。後は服部くらいしかロミータのライバルは居ないのだが…
「どんな返事したと思うぅ?」
「亜沙美から告白しても、服部先輩は(闇社会で暗躍する伊賀忍者を束ねる頭領だから)断られちゃうと思ってたんだけど…まさか、告白してくるなんて…」
伊賀忍者の頭領である服部(兄)が、一般人でおっちょこちょいな亜沙美に告白など有り得ない!と高を括っていたロミータは、彼の予想外な行動に頭が真っ白になっていた
「あはは♪なぁにぃロミータちゃん、もしかして私の気持ちに全然自信が持てないのぉ?」
「えっ!?…ってことは…断ったの?」
闇の社会で生きている。そこにさえめをつぶれば、服部(兄)以上に良い男に出逢える確率は、ほぼほぼ無いと言えるだろう!
しかし、そんな彼の告白を亜沙美は断ったらしいのだ。頭の整理が追いつかないロミータに亜沙美は…
「私はねぇ…とっくに世界中で誰よりもロミータちゃんのことを1番に愛しているんだよ。東京に行っても私を大切にしてね(笑)」
「えっ!?…良いの?亜沙美の人生のパートナーがロミーで本当に良いの?」
「あはは♪何言ってんのよロミータちゃん!私はロミータちゃんの事しか見てないんだからねぇ…」
「亜沙美〜!好きよ、大好き、愛してるわぁ!!」
高校の卒業式の日に学校の敷地内で、奥手で恥ずかしがり屋の亜沙美から、こんな熱い告白をされるなど全く予想していなかったロミータは嬉しさのあまり、全校生徒に聞こえてしまいそうなくらいの大声で、亜沙美への愛を吐き出した
【東京都内某所マンション】
「ふぅ…ようやく配信設備の設置が完了したねぇ。今夜から配信できるねぇ♪」
「さっそくヤル気、満々なのね。それでこそロミータの大好きな亜沙美よ♬」
前日、コンサート・プリンセスの新事務所から比較的近くにあるマンションに引っ越した亜沙美とロミータ
亜沙美の母親や、オリビアやスロウなど、多数の同じ事務所のライバーたちが引っ越しを手伝ってくれた
そのおかげで、翌日には部屋の隅々まで荷物の設置が終わり、今夜から2人とも配信開始できる状態までもってこられた
「それで、今夜の【引っ越し祝いオフコラボ配信】の段取りは大丈夫なの亜沙美?」
「ふふふ。実はこんなモノを用意しておいたんだよぉ。見る?」
亜沙美が両手で持っているタブレットを、2人で見つめる。流れ出した映像には…三重県の家に居る間に、亜沙美が隠し撮りしていたロミータとの生活の映像が映し出されている
「い、いつの間にこんなものを撮ってたの?」
「えへへ♪いつか東京に引っ越したら、最初のオフコラボで映像を流してロミータちゃんを……うぅん。ロミータを驚かせようと考えてたんだよぉ♪」
「あ、亜沙美!?今、貴女…」
タブレットを持ち上目遣いで、頬を染めながらロミータを見詰める亜沙美。その姿ももちろんロミータのハートに刺さりはしたのだが…それ以上に、彼女と出会って4年目にして初めて「ロミータ」と呼び捨てにされたのだ
「だってぇ…ロミータは亜沙美の大切な女の子なんだもん♪」
「そんなのロミーにとっても同じよ〜♬」
嬉しさのあまり亜沙美に抱きついたロミータ
ブイチューバー業界は、最初のライバーが世に出てからまだ10年にも満たない業界だ
何が正解で何が間違いなのか?未だにハッキリしない部分は多い。そんな荒波のような業界に身を投じていく若い男女は、これからも大勢の者たちが予想外な目に合うだろう
しかし!亜沙美とロミータなら、そんな険しい業界の荒波にも負けずに今後も活躍し続けるだろう
【完】