「え、えっと……うぅ……」
「ほら、こっちだ」
「あっ、まってくださいっ」
旅人様の後ろをついてカウンターへ向かう……あたりはずっと私を見てなにかニヤニヤしてる……なんで見てるの?怖いんだけど……
「今日はどういったご用件でしょうか?」
「あっ、えっと、依頼、依頼をしたいんですけど」
「ご依頼ですね、どういった内容でしょう?」
「あっ、はいっ、その帝国に行きたくて……えっと、こちらにいる旅人様に護衛依頼をしたいのです」
なんとか噛まずに言えた……受付嬢さんが何か手元で書いてるみたい……
「では、こちらに記入をお願いします」
「え、は、はいっ」
渡された書類に目を軽く通す……うん、本も読めたし問題なく書いてる内容はわかる……ちょっと書けるか不安だったけど、身体が覚えてるみたいで書くのも問題はなかった……
「はい、お願いします」
「はい、確かに。では護衛依頼は、彼にお願いするということでかまいませんね?」
「はいっ」
「では、こちらに記入をお願いします」
「わかった」
旅人様が書類を書いてると、誰かが近づいてくるのに気づきました……そちらに視線を向けると、先ほどから私を見ていた強面の明らかに悪そうな人が近づいてきました……
「おいおい、護衛依頼だろ?なら俺たちが受けてやるよっ」
大柄の、大体2M近い筋骨隆々の男……おっきすぎる、怖い……それと少し小柄だけどそれでも私よりも大きい男たちが私たちを囲むように近づいてきた……私は怖くて、旅人様の外套を握る……
「こちらは既に彼が受注しました。それに指定依頼です、あなた達は大人しくしててください」
「おいおい、そりゃないだろう~それに、お嬢さんも人数が多いほうが安心だよなぁ~?」
「ひっ」
「ぎゃはははっ、顔怖がられてるじゃねぇかっ!おっ、こりゃ、おいおい、フードでよくわからなかったがかなり可愛いぞこの子」
「お、マジか?ちょっとフードとってくれや」
「い、いやっ」
男の手が私に伸びてくる……怖いっ
「ぎゃっ!いてぇええっ」
「え?」
「俺の依頼人に手を出そうとするな……このままへし折ってもいいんだぞ?」
「まっ、ぐぁっ、ちょ、いてててててっ、わかった、わかったからっ!」
男は顔を真っ赤にさせて騒いでる……本当に痛いんだろうなぁ……でも、それより、すぐに助けてくれた旅人様、やっぱりカッコイイっ!うぅ、顔赤いかも……///
「つぅ~……てめぇっ!」
男たちが旅人様に、殴りかかってくる……怖くてつい目を閉じてしまった……
「ぎゃっ!」
「いでぇええっ!!」
「あぐっ」
「あふんっ♡」
「ふぇ?」
恐る恐る目を開けると、そこには倒れた4人の男たちの姿が……最後の1人、誰かはわからないけど、変な悲鳴だったけど……とにかく、旅人様が一瞬で4人をのしてしまった……やっぱりすごいっ!
「くっ、くそっ!」
「おっと、動くなよ……こんなモノでもお前を殺すなんて簡単なんだからな」
旅人様はカウンターに置かれていたペンを手に取ると男の首に突き立てる……確かにとがってるし重きり刺されたら痛いどころじゃすまなさそう……
「ひっ、わ、わかった、もう手をださないからっ!」
「じゃあ、さっさと行け、つぎは容赦しない」
「お、おぼえてろよぉおおおおお」
男たちは、ギルドから慌てて逃げ出していった……いや、それより、リアルに聞けるなんて思わなかったっ!覚えてろよなんて!すごい、ちょっと感動!
「アンナ、用がないならいくぞ」
「え?あっ、はいっ!」
私は旅人様の後ろをついてギルドを後にした……正直言えば、もう少し中をゆっくり見たいけど、怖い人が多かったし、下手に顔を見られると困るし……ギルドはいずれゆっくり行けるときがきたら行きたいな。
それから、特に用事もない私達は宿へ戻って、宿で料理を食べると、その日は就寝することになりました。
(はぁ……できればゆっくりお風呂に入りたいなぁ……でも、無理だよねぇ……うぅ……まぁ、宿ならお湯が貰えるから身体を拭けるのはまだありがたいかな……)
どうしても日本人としてはお風呂に入れないのが気になっちゃう……前世だと家のことは基本私がやってたし、お風呂だって自分で沸かしてた……お風呂は私がゆっくりできる憩いの場だった……
(ここ数日で私の生活がらっとかわっちゃったなぁ……いや、まぁ、親ガチャはどっちも失敗だったけど……でも、旅人様に会えたことだけは、こっちに転生してよかったことかなぁ///)
うぅ……やばい、すぐ隣のベッドで彼が寝てると思うとやっぱり緊張する……た、旅人様は紳士な方だし、手を出してこないのだってわかってるけど……でも、私って魅力ないかな?今の姿ってとんでもない美少女なわけだし……少しぐらい、そんな気を起こしてくれてもいいのに……
(そんな、そんな……(*ノωノ)キャー!!」
「どうした?行き成り奇声を発して……」
「ふにゃっ!?い、いえ、奇声なんて発してませんっ!」
「そうか?しっかり寝ておけ」
「はいっ、お、おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
いけない、いけない、妄想してたら声にでちゃった……でも、さすがに女の子に奇声とかいうのは失礼じゃないのだろうか……いや、夜にいきなり変な声だしたら奇声って言われてもしかたないのかな?うぅ、とにかく旅人様に変に思われたぁ……
そんな、悶々としながら、どうにか眠りに就いた私だった……
◇
「ふぁぁ……んにゅ……」
「起きたか」
「ふぇ?……あっ、た、旅人様っ!おはようございましゅっ!」
噛んだ……恥ずかしすぎる/// でも彼は特に気にした様子もない……そのあとは軽く身だしなみを整えて、朝食をとってから旅人様に連れられ、門へと向かう。
「あれだな」
「あれ……あっ、あの馬車ですか?」
「あぁ、さすがに高額なものは変えないからな、基本的な安馬車だが」
「い、いえっ、馬車をつかえるだけでもすごくありがたいですっ」
そうなのだ、馬車があれば私の移動速度を考慮しなくて済む……普通に歩いて移動したらいつまでたってもたどり着かないだろう……
「お客さん、お待ちしてました」
「あぁ、わざわざすまない」
「いえいえ、これが約束の馬車です、あと馬2頭と……」
旅人様が商人さんと話してる間に私はお馬さんが気になって近づいてみる………うわぁ、おっきい……触っても大丈夫かな?大人しそうだし……
恐る恐る手を伸ばして、撫でてみる……ふぁぁ、なんだろう、なんだろう、なんか、うん、なんかすごい。語彙力がなくなってるけど、これまで動物と触れあってこれなかったわけだし、すごい大人しい。かわいいなぁ
「ほぅ、こりゃすごいですね」
「え?え、えっと、さ、触っちゃダメでしたか?」
「いえいえ、その馬は結構気性が荒いんですが、あなたのことは平気なようだ」
「え?そうなんですか……すごく大人しいですけど」
「ふむ……アンナは動物に好かれやすいのかもな?今までそういったことはないのか?」
「えっと、ずっと動物には近づいたことがないんです……だからわからなくて」
「そうか、でもこうして気性の荒い馬が懐いてるんだ……動物に好かれやすい体質なのかもな」
「っ……えへへ、そうだと嬉しいです♪」
誰からも嫌われた私を動物が好いてくれる……それは私にとって初めての経験でした……