旅人様が言ってることはよくわかります……でも、このままだとあの子は1人ぼっちになってしまう、私ととおなじように……いや、私とはまた違うかもしれない、でも1人ぼっちが寂しいのは私が一番理解してる。
「お願いです。それでも、それでも知りたいです」
「はぁ……アステラの葉、ラモンの種、Bランク以上の魔石、それと聖水……これらを素材にすることで作れるとは言われている」
一瞬、旅人様が言ったものが理解できませんでした……でも、すぐにそれが薬の材料であることがわかりました。
「あっ、ありがとうございますっ!」
次の日、私は居ても立っても居られなくなり、旅人様が今日も出て行ったあと、すぐにアレン君の家に行きました。
「おはようございます」
「あら?いらっしゃい、また来てくれたの?」
「あっ、ハレナさん、えっと、お薬の材料がわかって、それで」
「あら、わざわざ調べてくれたの?気にしなくてよかったのに……」
「すいません、でもどうしても放っておけなくて……」
「そう、あなたは優しい子ね……ありがとう」
「いえ、それで、材料なんですけど……」
旅人様から教えてもらった材料の名前を告げる、アンネレーゼに転生してから記憶力がとてもいい……前世の私はそこまで記憶力はよくなかったから、純粋にこれはアンネレーゼのスペックかな…とにかく、これのおかげで間違いなく教えられる。
「なるほどねぇ……アステラの葉とラモンの種は、ここの迷いの森の奥でとれるって聞いたことがあるわ。魔石と聖水はとてもじゃないけど手に入らないわね……」
「え、えっと、それこそ冒険者さんに依頼するとか?」
「あなた、あまりこういったことの知識はないのかしら?」
「え?えっと、すいません……」
「ふふ、いいのよ……そうね、Bランク魔石となると、かなり強い冒険者さんにお願いすることになるわ、とてもじゃないけど依頼できる額ではないわね……それと聖水となると、教会に多額の寄付をしないともらえないものだからね」
「え?そ、そうなんですね……ご、ごめんなさい、私、知らなくて」
「いいのよ、調べてくれただけでも嬉しいから」
「で、でもっ、素材のうち2つは森にあるんですよねっ!?」
「え、えぇ、そうだけど……まってっ!まさかとりに行くつもり!?止めなさい、危ないからっ」
「大丈夫っ!絶対、採って来ますからっ!待っててくださいっ」」
「ちょ、ちょっと!」
私はハレナさんの家を飛び出すと急いで借家に戻る……扉を開け中に入ると旅人様が戻っていた。
「何をしていた?」
「あっ……え、えっと……あっ、あのっ!教えてもらった素材を、素材を採りにいきたいんですっ」
「はぁ……ダメだ」
「で、でもっ」
「よく考えろ、お前は時間をかけてそんなことしてる余裕があるのか?いつ追っ手が来るかもわからないんだぞ?今は少しでも進むことを考えるべきだ」
「それは、わかってますっ、でも……でも、放っておけないんですっ」
「はぁ……勝手にしろ、ただし素材の採取はお前からの依頼には入っていない、俺は手伝わない」
「……っ、わ、わかってます……これは私のエゴですから……だ、だから、自分でがんばりますっ」
当然だ、これは私のわがまま、旅人様に迷惑なんてかけられない……だから、自分で、自分で頑張るしかないんだ……私は借家を飛び出すと、森へ向かった……
「うっ……怖い……」
村のすぐそばにある迷いの森……そこは、外から見れば奥は暗くなり、良く見えない……暗い森の中を1人で進む、それだけで恐怖を感じ、足がすくむ……
「すぅーーはぁーーよ、よしっ、いくぞっ」
自分を奮い立たせて森の中に入る……そして、森に入って数分……
「はぁはぁ………憎い、私のこの体力のなさ……うぅ……」
予想以上だった……旅人様から森の中は移動が大変だって聞いてたけど、普通に歩くのと全然違う…なにこれぇ……
「グルルルル」
「ヒッ」
急いで隠れる……すぐ傍から魔物の声がする……この声はきっと肉食の魔物だ……いや、魔物は全部肉食?雑食とか草食ってあるのかな?わからない……でも、戦う力がない私じゃすぐに殺されちゃう……
(うぅ、怖い……早くどこかいって……)
どうやら魔物は私に気づかなかったみたいで、奥へ行ってしまった……ただ、奥へ行った……それって、私が向かう方向だ……
「どうしよう……このまま行ったら、あの魔物に食べられちゃう……」
とにかく、しばらく時間を置いてから、少しずつ奥へ進んでいく……そして、ある程度進んだところで、私は倒れ伏し、動けなくなっていました……
「うぅ……私はこのまま死んじゃうのかなぁ……」
ガサガサ
「ヒッ、な、なに?」
近くの茂みが動き、何かがこっちに来る……食べられる……私、どうして……うぅ……
「キュゥ~」
「ふぇ?」
茂みから現れたのは、なんだろう、兎?ちっちゃくてかわいい……でも、頭に宝石?見たいな石がついてる白いふわふわな不思議な生き物がそこにいた……
「怪我、してるの?」
よく見れば、その子は足を引きずっており、足は血がでて、真白な毛が赤く染まっている……
「だ、大丈夫?」
「キュゥウウ」
不思議な兎さんは、こっちを警戒してる見たい……というか、兎って鳴かないって聞いたけど、この子は鳴くんだ?あれ?この子も魔物なのかな?そうすると、怪我をしてなかったら、私は襲われてたり……
「に、逃げたほうがいいかな……」
「キュゥゥ」
「うぅ……あ、あのっ、あ、足、見せて?あっ、けっして傷つけたりしないから、大丈夫だからっ!」
当然言葉が通じるかはわからない……でも、どうしても小さな生き物をそのままにしておけなかった……根気よく手を伸ばしたまま、その子の動きを待つ……こっちからうごくときっと驚かせちゃうし、とにかく今は我慢だ……
それからどのぐらい経っただろう……根気よく待っていたら、その子はゆっくりとこちらに近づいてきて、私の手の匂いを嗅いでる見たい……
「大丈夫、大丈夫だからね?」
「キュゥ……」
その子はそのまま私の手の上に乗って身体を丸めるように座った……私は恐る恐る手に乗ったその子を持ち上げ自分の方に引っ張る……
「わぁ、ふわふわ……かわいいなぁ……」
あっ、いけない、とにかくこの子の怪我をどうにかしなきゃ……
「どうしよう……」
私の持ってる荷物には大したものは入ってない……というか、普段も旅人様が用意してくれるから、こういう時に必要なモノが全然わからない……
「これは、ダメ、これじゃ、うぅ、包帯なんてないし……えっと、折れてたりするのかな?そうすると添木がいる?えっと、でも添木になりそうなもの……うぅ……」
どうしよう、どうしよう、どうしよう……私はバカだ、ただ、ただ助けたい、役に立ちたい、ただそれだけでうごいて、後先考えなくて、旅人様に迷惑かけて……この子を助けることもできなくて……
「お願い……この子の傷が、治りますように……」
願ったって何にもならない、無駄だってわかってる、でも、私にはそれしかできなかった……
「え?」
なにか暖かいものを感じて目を開ける……私の手から薄っすら緑色の光が溢れ出し、兎ちゃんの身体を包んでいく……
「え?なに、これ……」
光が消えると、そこにはすっかり怪我が治った兎ちゃんの姿があった……血で染まった足はそのままだけど、先ほどのように引きずることもなく、ぴょんぴょん跳ねている。
「うそ、治った?え?私が、やったの??」
「キュゥッ!」
「え?きゃっ!?」
兎ちゃんが私に飛びつくとその、柔らかい身体を押し付けてくる……
「えっと、感謝してくれてるの?」
「キュ~」
恐る恐る、この子の頭に手を置いて撫でてみる……特に逃げる様子もなく、大人しく撫でられている。
「うわぁ、可愛い……///」
なんでこの子が治ったかわからない、あの光がなんなのかわからない、ただ……この子が助かって本当
によかった……