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第70話

「わぁ……すごいっ!」


 ようやく門を抜け、先に進むとそこには大きな船が見えました……大小さまざまな船が停泊している様はなかなか壮観です。


「えっと、あれが河なんですよね?」


「あぁ、この大陸最大の運河だな……あの大河を隔てて、あちら側が聖国だな……河の中央が国境になってるんだ」


「あの、おっきい船に乗るんですか?」


「あぁ、といっても直ぐに乗れるわけじゃないけどな」


「そうなんですか?」


「そりゃ、乗れる上限もあるしな……まずは乗船券を買う必要がある」


「乗船券!」


「テンション高いな」


「えっと、だって……ふ、船に乗るのって初めてで、ワクワクしちゃって///」


「まぁ、中々船に乗る機会もないしな……よし、いくか」


「はいっ!」


 私は旅人様の後をついていきます……いやぁ、やっぱり楽しみです、前世でも船には乗ったことはないですし、こんなにおっきな大河なんて前世今世でも初めてみたのです……どんな風になるんでしょう……今からでもドキドキします!



 それから馬車を走らせ大河の傍、船が停泊している場所まで来ました……そこで、すごく厳つい、こうなんていうんでしょうか……ファンタジーな海の男っていう感じの人です……うわぁ、腕ふっとい……私の腰ぐらいあるかもしれません……え、あれに掴まれたら私死んじゃいます……


「どうかしたか?」


「あっ、いえ!あのせ、船員さんが、ちょっと怖くて……」


「あぁ、まぁ…顔に傷もあるしな、でも、ああいった船員はわりかし多いから、毎回怯えてたらキリがないぞ?」


「そ、そうなんですか?」


「あぁ、ほれ、あっち見てみ」


 旅人様に言われて視線を向けると船の上を下にいる船員さんと変わらないような体型の人たちが歩いているのが見えました……片手でおっきな木箱を持ち上げて歩いているのが見えます……


「うわぁ……」


 こう、私は筋肉は嫌いではありません……ですが、こう、ムキムキマッチョは流石に趣味ではありません……正直あんなぶっとい腕とかはドン引きです……やっぱり、旅人様みたいな細マッチョというんでしょうか、あんな感じが理想で……キャッ///


「アンナ?」


「はっ!な、なんでもありませんっ」


「とりあえず、あの船員から乗船券を買うぞ」


「あの人が売ってるんですか?」


「あぁ、各船事に船員が下にいるだろ?」


「あっ、ほんとですね」


「乗る船にあわせて船員に声をかけて乗船券を買うんだ」


「へぇ……えっと、ここって大河だけを渡る船だけなんですか?」


「いや、いくつかは大河を渡ってべつのところに行くのもあるから、間違えると悲惨だな」


「わわ……えっと、間違えるとどのぐらいの時間がかかるんでしょう?」


「まぁ、場所によっては数カ月は覚悟がいるな」


「そ、それは間違えられないです…」


「まぁ、基本的に、ほれあそこに看板があるだろ?あれに行き先が書いてあるからな」


「あっ、ほんとですね……」


 旅人様の言った通り、船員さんのすぐ傍に看板がたててあります、そこに聖国行きと書かれているのが見えました……あとは、なにやら絵も描かれています……あれは何だろう?


「えっと、旅人様、あの絵はなんでしょうか?」


「あぁ、あれは文字を読めない人間用だな……あのひし形の模様が聖国を表してるんだ」


「あっ、えっと、読めないん人がいるんですか?」


 ここまでの旅でも冒険者の方達なんかも掲示板に貼られた依頼内容なんかも読んでいましたし、他にあった人たちも大体読めてたので、読めない人がいるっていう発想がありませんでした……


「そうだな……この辺は国にもよるが……と、言っても大体の国でも識字率はそれほど高いわけではないんだ……アンナは軟禁されてたとはいえ、王族として10歳までは教育を受けてただろ?だから問題なく読めるかもしれんが……平民だと、特に地方の村なんかだと文字を必要としない場合もあるんだ」


「なる、ほど……そういう意味では私はやっぱり恵まれてはいたんでしょうか?」


「さぁな、それをどう思うかはアンナ次第だ」


「そう、ですね……」


「まぁ、それはいいだろう……とりあえず、さっさと乗船券を買おうか」


「あっ、はいっ!」


 旅人様の後ろについて厳つい船員さんに近づきます……こちらを見る彼の目つきは、もう何と言うんでしょう……怖いです、盗賊と変わらないです、いや盗賊の目つきより怖いかもしれません……


「乗船券を買いたい」


「あぁ?ちょっと待て」


「あぁ」


 いや、態度悪くないですか?すっごく怖いんですけど、おっきいのを良いことにこっちを見下ろしながら睨んできましたっ!


「ふむ……予約の都合があるからな……一番近いのは3日後の10時の船だ」


「そうか、ずいぶんと盛況みたいだな」


「あぁ、今回は丁度聖国での聖光祭が行われる時期だからな……それに会わせて聖国に渡る旅行客も多いんだ」


「あぁ、なるほど、聖光祭か……丁度そんな時期だったか……わかった、3日後の10時の便を頼む」


「わかった、ここに記入をしてくれ、書けないなら代筆するが?」


「大丈夫だ」


 旅人様が船員さんから受け取った用紙に何か書き込んでいます……少しすると書き終わったのでしょう、船員さんに手渡しました。


「うむ、確かに……3日後、遅れないように……遅れても待たないし返金もされんからな」


「あぁ、わかってる」


 どうやら、さっきの紙を書いてる間にお金も払った見たいです、いくらだったんでしょう?



「さて、しばらく時間が出来たな、まずは宿をとるぞ」


「あっ、はい!」


「さて、聖光祭か……宿が空いてればいいが……」


「えっと、どういうことですか?その聖光祭っていうのもなんでしょう?」


「あぁ、聖光祭は聖国で年に1度行われる国をあげての大規模な祭りだよ……まぁ、一般的な祭りとは違って露店なんかはまずでないがな」


「そうなんですか?」


「あぁ、まぁ、あの国は宗教国家だからな、神事を色々行うんだ……それがまぁ、結構派手だから他国からわざわざ見に来る人間もいるんだよ」


「ふわぁ……なるほどぉ……」


 宗教には詳しくないですが、何となくイメージは出来ました……派手ということですし、日本であったテレビでやるようなおっきなお祭りとかに近いかもしれません……違うかな? とりあえず、旅人様と一緒に宿を探しに移動を開始しました。


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