「いらっしゃい、待っていたわ」
「どうも、ルルティア様……」
今日は、昨日彼女に一方的に約束されたように、朝、彼女からの遣いが迎えに来た……そして、私はレイン様と共にルルティアさんの待つ、彼女の屋敷へと来たのです……レイン様は屋敷でメイドさん達に歓待されています……まぁ、これはルルティアさんの指示でしょう……
「どうぞ、お座りになって」
「はい、失礼します」
「なるほど……」
「なんですか?」
「いえ、少なくとも10歳までは教育を受けていたのは本当のようね、所作が綺麗だわ」
「ありがとうございます……」
「まぁ、あくまで綺麗って評価が出来るだけで、完璧ではないけど」
「そ、それは、失礼しました」
「ふふ、いいのよ?長い間、社交界に出ていないですもの、仕方ありませんわ」
「そ、そうですね……」
やっぱりこの人嫌いっ!!!ぐちぐちとー!
「そ、それで、今日はなんのご用ですか?」
「あら、そんな急がなくてもいいのに……まぁ、まずはお茶をどうぞ?」
ルルティアさんの言葉で私の前に置かれたお茶に視線を向ける……このお茶はここに案内された後、すぐにメイドさんが淹れてくれたものです……うん、とりあえず、進められましたし?お茶に罪はありませんし……・
「あっ、美味しい……」
「ふふ、この国でも高級な茶葉を使っているのよ」
「そ、そうなんですね……」
「お茶の味がわかってくれて嬉しいわ」
「そ、そのぐらいわかりますっ」
いや、お茶の飲み比べとかしても詳しくはないので、なにも言えないと思いますが……
「そう…ふふふ♪ さて、まぁ、あまりいじめたら彼に怒られてしまうわね」
「と、とにかく早く要件をいってくださいっ」
「ふふ、仕方ないですね……まぁ、時間をかけても仕方ないですしね……ねぇ、アンネレーゼ様、あなたが彼のことを好きなのはわかってることだし……遠回りした言い方をしても仕方ありませんしね」
「なんでしょうか……」
「ねぇ、私かあなた、どちらが彼にふさわしいか……決着をつけないかしら?」
「決着…ですか?」
「えぇ、そうね……わかりやすく言えば決闘かしら」
「け、決闘ですか……」
「そうよ、私とあなただけでの決闘……まぁ、普通は貴族の決闘なんてたいていは代理をたてる場合が多いけど、それだとあなたの代理は彼になっちゃうでしょ?」
「ま、まぁ、そうなると思いますけど」
「だから、私とあなただけ、代理はなし2人で決着をつけましょうよ」
「そ、それは……」
「ふふ、怖いかしら?あぁ、一応言っておくけど、私は魔法が得意なの」
「そ、そう…ですか………」
「あなたも呪以外の天啓があるのでしょう?どうする?やらないなら私の一人勝ち、彼は貰うわ」
「うっ……わ、わかりましたっ!いいですよっ!けちょんけちょんにしてあげますからっ!?」
「けちょん?えっと、良くわからないけど、やる気はあるのね?いいわ、では、場所はこちらで用意するわ、決まり次第遣いをやるから、しっかり用意しておいてちょうだい」
「わ、わかりましたっ……」
「さて、まぁ、せっかくだし……このままお茶会をしましょうか」
「え、えぇ?」
「ふふふ、いいでしょ♪」
「な、なにがですか……」
「ほら、お茶が冷めてしまったら美味しくないでしょう?ほら、焼き菓子もあるんですよ」
「うぅ……い、いただきます」
「えぇ、どうぞ」
普通に美味しいのが悔しいです……ま、まぁ……彼女が作ったものではないですし……悔しくなんてないんですけどねぇっ!
「あ、あの……ちょといいですか?」
「なにかしら?」
「あの、ルルティア様は………レイン様のことが好きなんですか?」
「あら、当然でしょ?だからこそ結婚したいのだから」
「本当、ですか?」
確かに、最初に会った時、彼女の彼を見る目は、私と同じだって思った……でも、こうして話してると違和感をどうしても感じてしまう……
「あら、違うと思うのかしら?」
「は、はい……」
「なにか確証があるのかしら?」
「そ、その、確証があるわけじゃないです……で、でも、あなたは何か違うって……本当に彼の事が好きなのか、怪しいって、そう思うんです……」
私の言葉に、少し考えるそぶりを見せるルルティアさん……でも、それもすぐに終わるとこちらに視線を向ける……でも、その目は有効的なものじゃない、とても冷たい、そんな印象を受ける目をしている。
「はぁ……面倒ねぇ……あなたはやっぱり邪魔だわ」
「なに、を……」
「ふふ、安心して……決闘を申し込んでおいて闇討ちなんてことはしないわ……ただ、そうね……あなたの質問に答えるなら、私は別に彼と結婚したいほど好きっていうこともないわね」
「な、なら!なんでっ!」
「それは簡単なことよ、私の立場を盤石なモノにしたいの、だって聖王様の子どもよ?隠し子とはいえ、その血筋は本物なんですものっ!そんな彼と繋がりができれば、私の立場はもっといいものになるっ!そうでしょ?」
「つ、つまり……レイン様のことを利用するつもりなんですね……」
「えぇ、そうよ?おかしいことではないでしょ……貴族の政略結婚なんてものは普通のことなんですもの」
「れ、レイン様は貴族ではありませんっ!」
「えぇ、そうね……でも、そんなことは関係ないわ……私のために彼にはしっかりと傍にいてもらわないといけないのだからね……だから、あなたは邪魔なのよ、呪については手伝ってあげるから、さっさと彼と別れてもらえないかしら?」
「そ、そんなことっ!で、できないですっ!」
「なら、決闘で決めるしかないわよね……貴族の決闘は神聖なもの………あなたが勝てば私はもう彼に手出しをしないわ」
「わ、わかりましたっ……絶対勝ちますっ!」
「えぇ、楽しみにしているわ……まぁ、私が勝ちますけどね」
「私がか、勝ちますからっ!」
「「ふふふふふ」」
睨み合う私とルルティアさん……絶対負けられない戦いがここにあるのですっ!だけど、とにかくなにか、方法を考えなきゃ……虚弱な私にとっては戦うのは難しいのですから……